ラミニン5とラミニン6の生理活性におけるα3鎖G4-5ドメインの機能

概要

論文の詳細を見る
ラミニンを構成するサブユニット(α、β、γ)には各々複数の種類が存在し、その組み合わせにより少なくとも15種類のアイソフォームが存在する。ラミニン5(LN5;α3β3γ2)とラミニン6(LN6;α3β1γ1)は何れもラミニンα3鎖を持ち、表皮や肺上皮の基底膜に発現する。LN5については、細胞の接着と運動を強く促進することが知られているが、LN6の生理活性はこれまで全く報告されていない。そこで私たちはヒト線維肉腫細胞株HT1080にラミニンα3鎖のcDNAを導入する系を用いて、LN6やその部分欠損変異体タンパク質を精製し、生理活性の解析を行ってきた。α3鎖カルボキシル末端の球状領域(Gドメイン)には5つの連続した機能ドメイン(G1〜G5)が存在する。α3鎖cDNA導入細胞はLN5とLN6とを分泌するが、その培養液から精製されたLN5(mat-LN5)は限定分解により、強いヘパリン結合能を持つG4-5ドメインを失っていた。これに対しLN6はこの限定分解をほとんど受けていなかった。続いて、これら2つのα3ラミニンの活性比較を行った。その結果、LN6はmat-LN5と同様に、α3鎖G1-3ドメインとインテグリンとの相互作用を介して細胞を接着させることがわかった。しかしmat-LN5;上の接着細胞が顕著な伸展形態を示したのに対し、LN6上で細胞の伸展は認められなかった。G4-5ドメインを欠損した変異体LN6(LN6△G_<4-5>)を作製したところ、この基質上で細胞は顕著な伸展形態を示した。また、LN6はmat-LN5に比べて非常に弱い細胞運動活性を持ち、この活性もG4-5ドメインの存在により抑制されることが明らかになった。限定分解によりLN5から切り出されたG4-5ドメインは、遊離フラグメント(α3G4-5)として培養液中に存在する。精製したα3G4-5は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンを介して弱い細胞接着活性を示した。また、α3G4-5単独では細胞伸展を誘導しないが、微量のmat-LN5、LN6△G_<4-5>存在下で細胞の伸展を促進することを見出した。以上の結果から、LN6はLN5とは異なる生理活性を持ち、その一部はα3鎖の限定分解によって調節されている可能性が示唆された。
日本結合組織学会の論文

ラミニン5とラミニン6の生理活性におけるα3鎖G4-5ドメインの機能

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク