がんの悪性増殖におけるラミニン5およびラミニンγ2鎖の役割

概要

論文の詳細を見る
多様な上皮基底膜の主要構成成分であるラミニン5(LN5)はα3、β3、γ2鎖からなる糖蛋白質で、インテグリンα3β1、α6β1、α6β4などを介して細胞の接着と運動を強く促進する。LN5は上皮組織の構築や維持に必須の役割を果たしており、それを欠損する遺伝性疾患では表皮剥離や腎不全など重大な障害を招く。また、がんの浸潤部位や創傷治癒過程でLN5が高発現することが報告されている。最近私たちは胃がんや肺腺がんの分析から、高分化型腺がんは腫瘍基底膜にLN5を蓄積し、一方浸潤部位ではラミニンγ2鎖を単独で高発現することを明らかにした。In vitroでγ2鎖とβ3鎖は単独でもがん細胞から分泌された。ヒト織維肉腫細胞にLN5を強制発現させると、ヌードマウスの背部皮下での造腫瘍性が強く亢進された。一方、ヒト膀胱がん細胞にγ2鎖を単独で強制発現させると、ヌードマウスの腹腔内で顕著な浸潤性増殖を示し、腹水の貯留を促進した。これらの結果から、LN5は生体内においてもがん細胞の良好な基質として腫瘍増殖を促進するのに対して、γ2鎖モノマーは間質内への浸潤を促進するように推測される。γ2鎖はそれ単独では細胞の接着や移動を促進しないが、可溶性リガンドとして細胞に何らかの影響を与えている可能性がある。現在、この可能性について検討している。
日本結合組織学会の論文

がんの悪性増殖におけるラミニン5およびラミニンγ2鎖の役割

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク