ラミニンの生物活性部位の解明と応用
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概要
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基底膜糖タンパク質・ラミニンは、様々な生命現象や病態に深く関わっている多機能な巨大分子である。現在までに15種類のラミニンアイソフォームが報告されており、発生時の各段階で特異的にあるいは組織特異的に発現し様々な生命現象に関与していることが知られている。我々は組換えタンパクと合成ペプチドを用いることによりラミニンアイソフォームの細胞接着、器官形成、神経網再生、血管新生やがんの増殖転移などに作用する様々な生物活性部位を同定してきた。活性ペプチドの中には、内皮細胞や神経細胞に特異的に作用するもの、インテグリンやプロテオグリカン(シンデカン)などに結合するものが同定できた。最近、神経突起伸長活性を有しIKVAV配列を含むペプチドがβシート構造からなるアミロイド様の繊維を形成することがわかった。IKVAVペプチド誘導体を用いた構造活性相関からIKVAV配列を含むペプチドはアミロイド様構造を形成することにより細胞にう作用することがわかった。また、ラミニンアイソフォームの活性部位を比較することにより、ラミニンの活性に相同な活性部位やアイソフォーム特異的な機能部位が明らかになってきた。以上の研究によって、ラミニンの複雑な生物活性を個々の機能部位に分けて解明することや、MMPなどによるラミニンの分解物の生物活性の解明が可能になってきた。また、これらの活性ペプチドを多方面に応用するため、様々な活性ペプチドをキトサン膜に結合させた機能性膜を作成した。このペプチド-キトサン膜は細胞に対して特異的な機能を有することや、レセプターの異なる種々のペプチドを組み合わせてキトサン膜上に結合することにより、様々な生物活性をコントロールできることがわかってきた。これらの研究から、組織特異的な作用を持つラミニンアイソフォームから同定された様々な活性ペプチドの組織工学や再生医学の分野への応用の可能性が示唆された。
- 日本結合組織学会の論文
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