シロザおよびホソアオゲイトウのシュートの発育に及ぼす二酸化炭素と窒素の影響
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概要
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二次遷移初期に優占群落をつくる雑草2種(シロザとホソアオゲイトウ)のシュートの発育に対するCO_2と窒素の相互効果を調べた。そのために,4段階の窒素条件で水耕栽培した実生を350ppmと700ppmのCO_2濃度で長期暴露したのち,草丈・地際径・分枝数・主茎葉の葉身長と葉数を測定した。また,暴露期間中に花芽を着蕾したホソアオゲイトウについては,花芽形成に要する時間を調査した。シロザとホソアオゲイトウのシュートの発育は,窒素濃度の増加によって有意に促進された。結果として,植物体のサイズ生長も高窒素条件ほど良くなった(Table 1)。しかし,高CO_2濃度に対する生育反応は両種の間で異なった。草丈はホソアオゲイトウで(Fig.2),分枝数はシロザで(Fig.3),地際径は両種で増加した(Fig.2)。何れの促進効果も,シロザでは高窒素条件で,ホソアオゲイトウでは低窒素条件でより顕著だった。同様のけいこうは葉サイズにも見られた(Fig.4)。ただし,高CO_2条件は主茎の葉数に影響を持たなかった(Fig.3)シロザは好窒素植物であるのに対してホソアオゲイトウの窒素要求性は高くないことから(Table 1),これらの差異は両種間の窒素要求性の違いによると考えられた。ホソアオゲイトウの花芽形成は高CO_2・高窒素条件で僅かに遅れた(Fig.3)。しかし,長期間風媒花をつくるホソアオゲイトウにとって,この程度の僅かな遅れは種子生産などへ影響を及ぼさないと考えられた。しかし,シロザで見られた分枝数の増加は花や果実の着く場所を増やす可能性があり,結果的に種子生産数の増加をもたらすかもしれない。シロザとホソアオゲイトウのように二次遷移初期に優占群落をつくる草本植物の実生は多種よりも速くシュートを発生させ,生育空間を占有する能力がある。両草種は栄養塩環境が適切であれば,高CO_2濃度でシュートの発育は良くなるので,今後予想される高CO_2条件下でも優占種となるための潜在的能力を失うことはないと考えられる。しかし,実際に優占群落を形成できるか否かは他種との相互作用の結果であるのでこれを明らかにするために今後は混植による競合実験などが必要であろう。
- 日本雑草学会の論文
- 1995-02-10
著者
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