畑土壌中におけるコムギ種子の寿命とその自生化

概要

論文の詳細を見る
わが国における主要な麦類の産地である北関東では, シマイシュク病などの土壌病害を回避するために, コムギとオオムギとの交互輪作が提唱されている。しかし, そこではコムギの自生化によるオオムギへの異種穀粒混入・品質低下という新たな問題が生じている。そこで, 著者らはコムギ自生化抑制対策の確立のための基礎資料を得るために, まず, コムギ収穫時の損失穀粒の実態について調査した。次にこの実態にもとづいて, コムギ収穫後からオオムギ作付までのコムギ収穫時落下粒の生存状態を, 穂から脱落した単一粒と未脱穀の穂に付いたままの種子について, いくつかの品種を用いて検討した。まず, コンバインによるコムギ収穫時損失穀粒の実態を調査したところ, 自脱型コンバインでは50%, 普通型コンバインでは70%の種子が穂のままか, あるいは外えいに保護された状態で落下していた。また, コムギ収穫後からオオムギ作付までのコムギ種子の土壌中における生存状態を検討した。粒を埋設した場合はアオバコムギでは理土後3か月で95%の種子が土中発芽あるいは死滅しており, 発芽力を有したものは5%であったのに対して, フクホコムギの約50%, 農林61号では80%の種子が発芽力を有していた。しかし, 穂を埋設した場合では理土後3か月を経てもアオバコムギで45%, フクホコムギ, 農林61号では80%の種子が発芽力を有していた。以上の結果からコンバインでのコムギ収穫損失粒の多くが穂のまま落下している実態から, 農林61号以外のフクホコムギやアオバコムギにおいてもその自生化が畑輪作で異種殻粒混入などの問題となる可能性があることが推察された。
日本雑草学会の論文
1996-10-25

畑土壌中におけるコムギ種子の寿命とその自生化

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク