ウシとヒヅジに皮下注射された Progesterone の末梢血中の運命について
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概要
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ウシとヒツジに Progesterone (以下Pと略す.)を皮下注射し, 末梢血中の P とそのおもな代謝物とを検討した. 卵巣を摘出したウシ2頭(No. 496と602)に, 2gの P と50μCi(286μg相当)の4-^<14>C-progesterone を混合して油に懸濁して皮下注射を行なった. 1時間目から24〜36時間にわたって静脈血をとり, 血漿50ml中の放射能量を測定して, 注射した P の動向を検討した(実験I; Fig.1, Table 1). その結果, 2頭のウシの血中放射能量は第4時間目にピークを示し, 8〜12時間目まではかなりの高濃度を保った. その後No. 496では, 低い濃度をそれ以後に持続する様相を示したが, No. 602では, 24時間目の値は, なおNo. 496のピーク時の値に近いほどの高さを示した. この差は吸収の度, 肝が関与する排泄能の差, 脂肪内へのとり込み度の差などに基づくものと推測される. この2頭の実験から, P の比較的大量を皮下注射したさいには, 半日から一日はかなりの高濃度が末梢血中に持続されるものと見てよいようである. ただ測定せられた放射能量は P の量を示すのみでなく, 他の代謝物との総和を示すので, 第II, 第IIIの実験を併せ行った. 実験IIでは, 前記2頭のウシの4時間目の血漿500mlを抽出・精製し, 薄層クロマトグラフィーで分離したのち, ガスクロマトグラフィーで検出を行った. P のほか20β-OH-P (20β-o1と略す), および他のニ, 三の代謝物らしいものが検出せられた. しかし P と20β-o1以外は量が少ないので, 十分な追及は困難であった. ただこれらは17-OH-Pと androstenedione のいずれでもないことが立証された. 血漿100ml当たりの P の量は1.77μg (No. 602)と1.15μg (No. 496)であった. 20β-o1に関しては, 2頭を合わせて, 0.38μg (100ml血漿中)がやっと検出できた. 他の1頭の卵巣摘出のウシ(No. 202)に, 75μCi (500μg強に相当)を皮下注射し, 第4時間目に得た血漿600mlを処理し, 最後に薄層クロマトグラフィーで分離を行ない, 各 Band の放射能量を測定した. P と20β-o1に該当する Band には, 多量の放射能が検出された. そのほかは若干量の放射能が androstenedione と20α-o1に近いRFをもつ物質として存在することが推定せられた. 注射した P についての回収率では2g余を注射したNo. 496と602の2頭では, 100ml血漿当たり約100方分の1から200万分の1の P が回収された. これに比べて, 500μg余の皮下注射を行なったNo. 202では20万分の1 (100ml血漿中)程度であった. この差(5〜10倍)は, おそらく注射量の差に基づくものであろう. P と20β-o1 100:13 (P:20β-o1)となった. しかし500μg余の量的比率は, 2gを注射した例では大約, 平均を注射したNo. 202の例では100:10以下(計算比率100:8.76)の結果を得た. この代謝比の差も, おそらく注射量に関係するものではなかろうか. 多量の注射時には, 代謝が比較的急速に行なわれることになるものと推測される. 卵巣を摘出した1頭のヒツジに20μCiの P (114μg相当)を皮下注射した. 第3時間目の血中には, 大約100:5の P と20α-o1が存在することがほぼ確められた. 他の代謝物に関しては, この時点では, ほとんど認められないという結果を得た.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1967-12-25
著者
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