ヤギ精巣の微細構造:性細胞間の細胞質間橋
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概要
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麻酔下で去勢したヤクシマ系ヤギ12頭の精巣をグルタール・アルデヒド液で灌流固定し, 組織小片をタンニン酸を含む液で再固定した. 更に, オスミウム酸で二重固定し, 小塊のまま酢酸ウラニウム液で染色し, アルコール・アセトン系列で脱水後エポン樹脂に包埋し, 切片をクエン酸鉛液で二重染色を施した後, 電顕で観察した. 性細胞の不完全分裂結果できる細胞質間橋は, 性細胞の各段階(精祖, 精母, 精子細胞)でみられた. 間橋は, 初め中間体(midbody)と呼ばれる紡錐糸の集束遺残物が形成される時点に確立し, その内部は直ぐに滑面小胞体を重ねた多重cisternae構造(bridge-partitioning com-plex)に移行し, 細胞質の流通を塞ぐ形を示す. 前後して, 間橋の細胞膜内側は密度の高い内張りの構造物(bridge density)で裏打ちされ, 内張り構造は間橋が開通後も, 精子遊離(spermiation)後の細胞質分屑(residual cytoplasm)に至るまで維持された. 間橋内には小器官等, ほとんどすべての細胞質成分が出現した. 間橋は基本的には円筒状の立体構成をしているので, 精母細胞の段階までは, 縦断切片において, 二本の平行線あるいはカスガイ形ないし樽形の像として現れ, 外側をセルトリー細胞の扁平な細胞質に囲繞されている. しかし, 精子細胞の成熟につれて間橋は姉妹細胞に圧されるように太く短くなり, 切片上でその側面は馬蹄形あるいは小半円状の孤を画く像となり, セルトリー細胞との接触面が減少した. ヤギの性細胞間橋は, 他の哺乳動物におけると同様, 1)姉妹細胞間の成熟・変態の同期化, 2)姉妹細胞間の物質交換, 3)精細管内の定位, 移動(精上皮ウエーブの規定), 4)細胞分裂の規制(精上皮サイクルの統合)等, 極めて重要な働きをもつことが示唆された.
- 1992-04-15
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