蜜蜂及びその巣箱におけるアンピシリンの動態
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概要
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アンピシリン (ABPC) はアメリカ腐蛆病 (AFB) の原因菌であるPaenibacillus larvaeに対するin vitroにおける抗菌活性が非常に高い薬物である. そこで, 実際に蜜蜂の群に投与してその巣箱内における動態を観察し, 防除薬としての効果を評価した. 薬は蔗糖液あるいは花粉代替え飼料 (ペースト) に30mg/群の割合で添加し, 1日間投与した. 蔗糖液への添加投与ではハチミツ中への移行が大きく, 投与後14日まで残留検出限界 (0.01ppm) を上回った濃度が持続した. ペーストへの添加投与ではハチミツへの移行は小さく投与後14日には残留検出限界以下となったが, AFBの標的である若齢幼虫やその餌であるゼリー中への移行も小さかった. これはABPCの体内移行性が乏しく, 酸性物質であるためにゼリー中に分泌されにくいこと, またゼリー中で不活化されることによるものと思われた. 腐蛆病菌に感染感受性をもつのは孵化後2日目までの若齢幼虫であり, この間の幼虫は成虫が分泌するゼリーしか摂食しない. 従って, この時期の幼虫へ薬を効果的に投与するためには, 成虫に摂取された薬がゼリー中に分泌され, しかも安定であることが重要である. 以上より, ABPCの腐蛆病に対する防除効果は小さいと考えられた.
- 1997-09-25
著者
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中島 千絵
畜産生物科学安全研
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吐山 豊秋
(財)畜産生物科学安全研究所
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中島 千絵
(財)畜産生物科学安全研究所
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岡山 敦子
(財)畜産生物科学安全研究所
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迫川 朋子
(財)畜産生物科学安全研究所
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中村 晃
(財)畜産生物科学安全研究所
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吐山 豊秋
畜産生物科学安全研
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迫川 朋子
畜産生物科学安全研究所
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