事務所建築のフレキシビリティーに関する研究
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概要
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本論文では, 前回論文に示されたフレキシビリティー概念, 及びその試算方法から出発し, (1)では, より簡略な実用可能な計算方法とその結果を示し, (2)に於て若干の理論的補足の後, (3)で計算値と現実の状況との照合を試みた。これは理論検証の為の第一歩であるが, 現実の状況にはいくつかの理論的に確定し得ない要因があり, 資料には精度, 取扱い上の制約があり, 理論に於ても未だ拡張の不充分な点があった。以上を考慮に入れ, 今回の結果はほぼ肯定的なものとの判断に留まるであろう。この結論をより確実なものとする為には上記についての改善が計られなければならないが, その内理論的不備の主要な問題としての動的解析について(4)でその試論が述べられてた。次に行われるべきはこの試論による計算の実行であるが, それに際しては, 新たな資料が必要とされると共に, 全体資料の整備, 処理精度の向上が計られ, 異なった状況にあるケース・スタディーへの検討がされねばならない。これらは, いずれも次の段階の仕事として残された。又, この理論の計画論への展開の可能性について2, 3, 部分的に述述べられたが, 全体的には継続研究の成果を待ち, 稿をあらためて述べることとする。最後に, これらの作業の目標及び今後の課題を改めて要約する。i)これ迄, 事務所建築の計画に当って, 最初に要求事務室面積から全体の構成, つまり, 建物のブロック分け, 各階平面規模, 階数, コア, 固定壁による空間分割等の決定に際し, 考慮されていた要因の中に新たに有効利用率が導入される。この結果は, 全体構成によって有効利用率が左右され, 建設必要面積が変更されるべき事を示すことになる。同時にこの有効利用率は, 建設, 運営上の資金効率を当然規制する。換言すれば, 以上の予測を含んだ全体計画が可能となる。ii)更に, 事務室に於て一般に重視されている空間分割の自由化の為の可動システム化への努力に対しても, 空間分割の変動頻度が与えられ, 利用頻度を考慮に入れた可動システムの計画が可能となる。iii)平面計画については, モジュール効率が示され, これによりモジュラー・プランニングの効率を問題にすることが可能になる。iv)上記の全項目に関係して, 空間分割の組織単位を組織構成のどのレベルのものとするかが重要であるが, この事から逆に, 大部屋システム, 個室中心システム等の効率面からの優劣が判定可能となる。以上が現段階で明らかとなった目標の内容であるが, これらは, いずれも事務組織上の問題と関係を持っており, その構成と変化の状態を示すデータが必要とされているが, 当面これは個別的調査データに頼らざるを得ない。その積重ねの上で, 一般的な結論を見出すことは, 今後の重要な課題であろう。その1つに前回の論文に述べた標準的な作業単位の確認がある。尚, 上記平面計画については, iii)のモジュール効率及びiv)の分割の規模のみが取上げられているが, 更に平面形状の影響をとらえる指標を見出すことも課題である。
- 社団法人日本建築学会の論文
- 1980-11-30
著者
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