砕氷模型工学の新発展
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
砕氷現象の模型化(Ice Modeling)は1950年代のほぼ同時期にLaningradとHamburgにおいて開始された。北極圏の石油、天然ガスその他諸資源の発見は氷工学(Ice Technology)の発展を一段と促進した。新式の氷海水槽(Ice Model Basin)がColumbia Md. (USA)、Helsinki (Finland)、Hamburg (West Germany)に建設された。模型実験には主として塩水氷が使用されるが、模型氷の強度と弾性率を等しく縮尺するのが困難であったために、正しい結果を得るには至らなかった。最近Hamburg Model Basin (HSVA)は天然の海水と略等しいE/σ比を有する模型氷の製法の開発に成功した。砕氷船の抵抗を計算するために種々の相異なる推定式が提唱されている理由としては、理論的考察の欠如、砕氷現象の物理的解釈の不完全さ、模型実験に要求される基本的相似則の無視、実船試験における試験法の不適当が挙げられる。実船実験より得られるデータのばらつきは非常に大きいため、幾種類もの実験式の正しさの根拠と成り得る。実船データががくもばらつく理由は色々ある。HSVAが最近行った砕氷船の模型実験の結果は、Milanoが理論的に発展させた推定式の正しさ-いわゆるMilano humpも含め-を裏付けるものと考えられる。破氷現象に関与する諸パラメータ間の基本的相互関係を解明するためにHSVAは次のような研究を行った。形状が単純な傾斜した平板を用いて砕氷実験を行い、異なる抵抗成分の分離と解析がなされた。その結果、砕氷を行う物体の抵抗は、単純な物理的諸関係によって支配されることが示された。この研究の成果として新しい砕氷法の着想が得られた。この着想を採り入れた新しい砕氷船は氷板を主として剪断で割り、しかも船の後方に氷片の無い開水路をつくる。
- 1978-05-25