妊娠期におけるストール(とじ込め)飼育が繁殖に及ぼす影響について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠豚の群飼放牧においては、群飼場での斗争による傷害や流産、採食量の不均等による栄養障害に伴なう繁殖性の低下が問題になるので、本試験では、交配・妊娠期の繁殖豚をストール飼育し、豚の健康や繁殖成績、飼料の利用性などに及ぼす影響について調査した。試験区としては、ストール(とじ込め枠)内にとじ込める期間によって、1区(受胎後30日間ストール飼育)、2区(同84日間)、3区(妊娠全期間)を設け、各区15頭ずつを用いて、交配開始後第4産受胎までを試験期間とし、次の結果を得た。1.分娩、哺育開始時における頭数、及び、体重では、区間による明らかな差は認められなかった。なお、産次別にみると、3産次に比べて初・2産次の死産率は高く、哺育開始率は低い傾向がみられた。2.育成率(区平均)では、3区は全産次とも84%以上を示し良好であったのに、2区では70%台にとどまり、やや劣る傾向がみられた。3.母豚の事故では肢蹄の損傷が最も多く、特にデュロックにおいて高い事故率がみられた。4.分娩時の子豚娩出間隔や分娩の難易については、特には区間の差が認められず、また、全分娩例を通じて難産等の事故は認められなかった。5.妊娠期母豚の増体重では、各産次とも3区が最も多く、次いで2区、1区の順となったが、このようにストール飼育期間によって差が生じるのは、運動量が抑制されたためと考えられる。なお、産次別にみると、2産までは各区ともかなり増体がみられたが、3産次では成長の鈍化がみられた。6.飼料摂取量は、妊娠期においては各区ともほぼ同量であったが、離乳後の空胎期摂取量では、受胎までの所要日数に応じて差が生じ、各区とも初産後が最も多くなった。また、授乳期の摂取量は、各区とも産次が進むにつれて増加したが、これは産次の進行に伴なう体重の増加と泌乳力の増加によるものと考えられる。7.繁殖豚の飼料利用性についてみると、同一産次については1区が最も悪く、2区、3区の順にすぐれる傾向がみられたが、これにはストール飼育期間による運動量の差が関与しているものと考えられる。なお、妊娠期については、各区とも産次が進むにつれて悪くなる傾向があり、特に3産次になると急激に悪化しているが、これはこの期における増体の低下による。
- 日本家畜管理学会の論文
- 1976-12-10