タケノホソクロバ Artona funeralis (Butler) (Zygaenidae) の生活史に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1958, 1959両年度にわたり, 京都市北区において, タケノホソクロバArtona funeralis(Butler)の生活史を, 野外観察と飼育実験の両法によつて追究した.結果を以下に要約する.1.本種は1年間に3世代を営み, 第3世代の蛹態で越冬する.2.越冬蛹は5月中旬〜6月中旬に羽化, 産卵し, 第1世代は5月下旬〜7月中旬, 第2世代は7月下旬〜9月上旬に営まれ, 第3世代は10月下旬に蛹化して越冬にはいる.3.卵期間は各世代間にあまり差がなく, それらを平均すれば7.3日であつた.各世代の平均孵化率は, それぞれ85%, 80%, 80%であつた.4.幼虫期は5令で, 各令の平均所要日数は, 第1世代の第1令5.8日, 同第2令5.3日, 同第3令5.2日, 同第4令6.1日, 同第5令7.4日, 第2世代ではそれぞれ, 4.7日, 4.0日, 4.9日, 6.0日, 8.4日, 第3世代ではそれぞれ, 5.5日, 6.6日, 8.9日, 7.9日, 11.5日であった.全幼虫期間の平均所要日数は, 第1世代29.8日, 第2世代28日, 第3世代40.4日であり, 蛹化率は夫々55%, 65%, 57.5%であつた.5.前蛹期は第1世代1.1日, 第2世代1.1日, 第3世代2.2日, 蛹期はそれぞれ11日, 11日, 187日(越冬)であつた.羽化率はそれぞれ, 47.5%, 56%, 11.5%であつた.6.雌成虫は原則として羽化後1日経つてから交尾し, さらに1日経過してから産卵する.成虫期の寿命は雌1〜6日, 雄1〜9日, 平均寿命はそれぞれ3.5日, 4.0日であつた.雄は雌より1〜2日早く羽化する.7.卵はタケ或いはササの葉裏に整然と並べて産みつけられ, 卵数は第1世代20〜182(平均90), 第2世代20〜268(平均140), 第3世代26〜145(平均81)であつた.8.幼虫は第1〜2令は完全な集団をなして行動し, 第3令に達すると分散し始め, 第4, 第5令では概ね単独に生活する.9.蛹化は腐竹, 腐木の内側, 板塀, 軒先等で行われ, まゆは濃褐色, 扁平楕円形の薄い蝋質の板で, 皿を伏せたような形に蛹を被う.10.本種幼虫が野外でイネを食害する例を観察したし, また飼育室内でも本種成虫はイネの葉に産卵し, それから孵化した幼虫はイネを食べて終令に達し得ることが確認された.11.以上の他, 成虫の交尾習性, 幼虫の移動性, 眠性, 卵内発生に及ぼす湿度の影響等を観察記載した.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1960-12-25
著者
関連論文
- 17 妙高高原におけるブユ相調査成績
- 45 野外におけるコガタアカイエカ成虫の活動開始時刻
- 2〜3 の魚族による水田の蚊幼虫防除の試み(第 21 回大会講演要旨)
- 京都市北郊山地帯におけるコガタアカイエカの記号放逐実験(第 21 回大会講演要旨)
- コガタアカイエカの飛翔活動について(第 19 回大会講演要旨)
- コガタアカイエカの垂直分布調査(第 19 回大会講演要旨)
- 京都市北郊におけるブユの研究 IX : 吸血時におけるアオキツメトゲブユの分散習性 (第 18 回大会講演要旨)
- 野壺で発生するハエの周年観察 : 第 2 報, 野壺におけるケブカクロバエとセンチニクバエの周年発生状況について(第 14 回大会講演要旨)
- 12 室内飼育実験で観察されたキョウトゴキブリ (仮称) の行動 : I 産卵行動
- 49 室内飼育実験で観察されたキョウトゴキブリ (仮称) の行動 : II 飼育個体群内の順位と争い
- 9 キョウトゴキブリ(仮称)の生態に関する 2〜3 の知見
- 水田における各種薬剤の蚊幼虫に対する効果について (第 18 回大会講演要旨)
- 京都市左京区岩倉付近の各種水田における蚊幼虫・蛹相の季節的消長について (第 18 回大会講演要旨)
- スミチオン油剤による水田の蚊幼虫防除実験(第 17 回大会講演要旨)
- 54 キヨウトゴキブリの産卵期と卵期間の関係
- 38 タケノホソクロバ幼虫の天敵 I : 寄生率
- アベイト水和剤によるブユ幼虫駆除実験(第 23 回大会講演要旨)
- 京都市におけるゴキブリの分布 (第 18 回大会講演要旨)
- ヒメイエバエの生態研究 : (1) 冬季の活動(第 16 回大会講演要旨)
- ゴキブリの生態学的研究 (1) : クロゴキブリ, チャバネゴキブリ, トビイロゴキブリの越冬に関する観察(第 15 回大会講演要旨)
- 建造物の各階におけるハエの捕集成績(第 13 回大会講演要旨)
- 野壼で発生するハエの周年観察, 第 1 報, 発生するハエの種構成と周年消長(第 13 回大会講演要旨)
- タケノホソクロバ Artona funeralis (Butler) (Zygaenidae) の生活史に関する研究
- ハエの寄生蜂の一種 Exolytus laevigatus の周年消長について(第 12 回大会講演要旨)
- 実験的野壼におけるハエ発生状況(第 12 回大会講演要旨)
- タケノホソクロバの生活史について(第 11 回大会講演要旨)
- 京都市内の便所に発生するハエ蛹と, その寄生蜂の季節的変動について (予報) (第 10 回大会講演要旨)
- 第 2 世代におけるチヤドクガ幼虫の生育状態について (第 10 回大会講演要旨)