ビール麦倉庫に発生した集団的皮疹とその原因とみなされるダニ類について
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概要
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1)主として関東地方において1960年頃よりビール麦倉庫の荷役人夫の間にダニによる皮疹が目立つてきている.筆者らは1965年9月29日, 最も被害の甚だしい茨城県下の4倉庫において被害の実体とダニ類の調査を行なつた.2) 皮疹の発生は毎年9月-11月に最も多く, 荷役後6-8時間で症状が現われている.症状発現までの時間がやや短いことを除いて米国におけるシラミダニによる被害にきわめて類似した点が多い.3) 見出されたダニ類は, シラミダニPyemotes uentricosus (Newport), アシナガツメダニCheletomorpha lepidoptorum (Shaw), アシボソオソイダニ(仮称)Cunaxa sp., フチドリイトダニ(仮称)Leiodinychus sp.の4種であつた.4) これらのうち, シラミダニとアシボソツメダニはきわめて個体数多く, 皮疹の主要原因とみなされる.アシボソオソイダニは個体数僅少, フチドリイトダニはその属する科の習性や食性から考えて皮疹の原因とはなりがたい.5) シラミダニの宿主およびアシナガツメダニの被捕食者となりうるものとして, 倉庫内に多数繁殖しているツヤコチャタテおよびコナチャタテ属の一種, さらにコクゾウムシや自活性ダニ類(フチドリイトダニなど)があげられよう.6)興味ある現像として, シラミダニは俵やかますの表面にほぼ均一に分散しているが, 一部のかます上に直径7-8cmのオレンジ色のシラミダニ群塊が見られた.また群塊が淡いピンク色の場合には半数以上のダニが死亡していた.この群塊の形成がなにを意味するかは不明である.7) ダニ類による被害発生の原因としては, 倉庫の構造上の不備(開放性, 土間床などの点), それに伴なうダニ類の栄養源としての昆虫類・ダニ類の侵入増殖, わらの使用, 薬剤散布・燻蒸の不徹底などが考えられる.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1966-03-31
著者
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