福井県の恙虫について
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概要
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1.筆者等は1953年4月から, 1954年12月迄の21カ月間に毎月福井県各地区より野鼡を捕獲し, その寄生恙虫幼虫の採集を行い, 各種恙虫幼虫の存在を明確にする事が出来た.2.捕鼡数は総数566頭でApodemus speciosus 334頭, Microtus montebelli 101頭, Urotrichus talpoides hondonis 66頭, Clethrionomys smithii 47頭, Apodemus geisha 16頭, Rattus norvegicus 2頭の6種であつた.3.福井県下全般的な広汎な調査の結果, 2属3亜属20種1亜種, 同定数13, 562匹の恙虫幼虫を採集した.4.宿主とこれに寄生する恙虫の種的関係に就いては野鼡においてC.smithiiが恙虫指数(74.67)で圧倒的に多く寄生して居り, 順次M. montebelli (26.91), A. geisha (21.60), A. speciosus (17.90), U. talpoides hondonis (15.86)であつた.R. norvegicusは捕鼡数が少なく, 対象外とした.5. T. scutellarisを本県において特定な地区に秋季見出している.この事は同地区からの野鼡よりRickettsia orientalisを分離した事と相まつて, 疫学的に重要であつた.6.Gahrliepia saduskiに就いて, 地理的に分布の異なる背甲板後縁毛が2本, 3本, 4本のそれぞれを同定したが, 福井県では2本の型のものが全体の92.7%, 3本6.4%, 4本0.9%で, 本県の恙虫の特徴ともいうべき, 東西入り乱れた恙虫相の一端を知る事が出来た.7.T. fuji, T. kitasatoi, T. pallida, G. saduski, T. kansaiは本県において普通に見出される種類で, T. intermedia, T. miyazakii, T. owuensis, E. alpina, T. miyazakii fukui, T. kawamuraiは山林地区に見出され, 低地の平野部には見られない.之等に反しT. tamiyai, T. mitamuraiは平野部に見られた.殊にT. kawamuraiは海抜950mの地区にて見られた.8.T. kuroshioは石川県寄りの平野部には見られず, 県中央部地域の愛発村, 堺村, 下宇坂村の山林地区で見出された.9.T. miyazakii fukuiの種が見出されて, 亜種の問題が起つた.胴背面の毛の性質はT. miyazakiiに似ているが, 背甲板の形態が異なりPW94.5〜108.0μ, AW72.9〜94.9μ, amはalより長く, plはsより短い.plは70.2〜81.0μである.胴背面の剛毛の配列は, 2, 10, 10, (2), 10, (8), 8, 12〜13, 総数48〜58本の特徴ある配列で, 第三脚基節にはA. typeの分岐毛がある.10.T. kawamuraiが大野地域の石徹白村から採集されたので, 計測した結果, 福井県で見出されたものはAWとPWが比較的長く且つPSBは小さい.胴背面の剛毛は例外なく2, 8, 6, 6, 4, 2の配列で, 第三脚基節にはA. typeの分岐毛がある.11.福井県の地理的に大別した4地域の恙虫分布相が判明し, 加えて恙虫幼虫の分類上意義ある問題を提出した.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1958-12-10
著者
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大瀬 貴光
Imperial Cent. Lab. Ethiopia
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大瀬 貴光
福井県衛生研究所
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多田 哲夫
福井県衛生研究所
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前田 嘉右衛門
福井県衛生研究所
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小原 寧
福井県衛生研究所
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福島 俊定
福井県衛生研究所
-
多田 哲夫
福井県衛研
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