涙腺原発腺様嚢胞癌 : 2症例の報告と文献的考察
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概要
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涙腺に原発した腺様嚢胞癌(以下,ACC)は稀とされるが,今回対照的な臨床経過をとった2症例を報告する.またMIB-1染色によるACC増強能に関する検討を加える.症例1は63歳,男性で,初回に選択的腫瘍摘出術と放射線照射を行い,16ヶ月後に大きな頭蓋内腫瘍として再発したsolid patternのACCである.その後部分摘出と放射線照射を試みたが,現在再び腫瘍は増大している.症例2はcribriform patternの45歳,男性例で,周辺組織を含めた腫瘍全摘出後に放射線照射を行い,16カ月間再発を認めていない.MIB-1染色では症例1でより高い陽性率が示されたことから,腫瘍細胞増殖能においてもACC solid patternは悪性性格が強いと思われる.ACCに対する治療の面からは腫瘍の根治的切除が最善であり,少なくとも腫瘍の周辺組織を含めた全摘出が好ましく,進行例では眼窩内容除去術も考慮する必要がある.さらに,術中病理診断にてsolid patternの場合には十分な切除範囲を設けることが重要である.放射線照射による腫瘍の縮小は一時的なことが多いため,残存腫瘍や再発例にも可能なかぎり外科的切除を計画すべきと思われる.
- 日本脳神経外科コングレスの論文
- 1995-07-20
著者
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奥野 修三
大阪脳神経外科病院
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奥野 修三
獨協医科大学脳神経外科
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落合 慈之
獨協医科大学脳神経外科
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永井 政勝
獨協医科大学脳神経外科
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落合 慈之
Jr東京総合病院脳神経外科:(現)関東逓信病院脳神経外科
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永井 政勝
獨協医科大学脳神経外科:(現)栃木県赤十字血液センター
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