「尊厳死」選択の基準 : 悪性脳腫瘍の臨床例から
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概要
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有効な治療法に乏しい悪性脳腫瘍の3症例の治療体験に基づき「尊厳死」選択の基準について考察を行った。症例1は75歳男性、脳原発の悪性リンパ腫で、手術・輸血を拒否するLiving Willを提示されたため積極的治療を行い得なかったが、患者は数力月の良好なQOLの後、従容たる死についた。症例2は36歳女性、大脳基底核の膠芽腫の末期で意識障害を伴っていた。代理人としての夫の希望に沿い、免疫療法と自宅療養の後、尊厳死の終末を迎えた。症例3 13歳女児。小脳の悪性脳腫瘍の再発。本人とのインフォームド・コンセントは行い得なかったが、両親の強い希望によりターミナル・ケアのみを行った後、苦しむことなく静寂の中に死亡した。以上の3症例は安らかな死-尊厳死(積極的安楽死)を目標とした点で共通している。悪性脳腫瘍に対する現在の治療法には限界があり、治療の成功率、平均生存期間についての予測も可能である。このためとくに末期においては、尊厳死を受容せざるを得ない症例もなお多いのが現状である。このような症例では、苦しみを和らげることとQOLを重視し、十分なインフォームド・コンセントと合議によるdecision makingを前提として尊厳死を認めるべきであり、また個々の症例について、患者本人および家族の考え方の多様性に柔軟に対応して行くべきであると考えられる。
- 1997-09-08
著者
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