北半球産ウブラリア科(ユリ目)の種皮解剖とその分類学的意義
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概要
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Dahlgrenらの定義によるウブラリア科(Uvulariaceae, ユリ目Liliales)のうち, 北半球に分布する6属で, 各属1種から数種について種皮の解剖学的構造を記載した。ウブラリア科の種皮構造は変異に富んでおり, 細胞の形・細胞壁の肥厚や細胞内蓄積物の分布や性状に基づいて5つのグループに分かれる : (1)ウブラリア属(Uvularia)とチゴユリ属(Disporum), (2)タケシマラン属(Streptopus)とコンゴウソウ(Disporum ovaleまたはStreptopus ovalis), (3)ツバメオモト属(Clintonia), (4)ホトトギス属(Tricyrtis), (5)プロサルテス属(Prosartes)。種皮構造においては, これらウブラリア科の属とスズラン科(Convallariaceae, キジヵクシ目Asparagales)の間では, 近縁性を支持するような特徴は殆ど見られず, ウブラリア科の一部はむしろユリ科(Liliaceae)やエンレイソウ科(Trilliaceae)の属に類似した種皮構造を持っていた。プロサルテス属はチゴユリ属に含められることもあるが, その種皮構造はチゴユリ属とは大きく隔ったものであった。コンゴウソウをチゴユリ属に含める見解とタケシマラン属に含める見解とがあるが, その種皮構造はタケシマラン属のそれとよく一致した。種皮解剖に基づくグルーピングは, 胚発生学的研究やrbcLの塩基配列に基づく系統関係とおおむね整合的であり, ともに現在のウブラリア科の範囲づけを支持しない。
- 日本植物分類学会の論文
- 1994-09-30
著者
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福原 達人
京都大学理学部植物学教室
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福原 達人
京都大学大学院人間環境学研究科
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SHINWARI ZABTAKHAN
京都大学理学部植物学教室
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Shinwari Zabtakhan
京都大学理学部植物学教室:(現)パキスタン自然史博物館
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Shinwari Zabta
京都大学理学部植物学教室
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