東カリマンタンのシダ植物補遺2
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概要
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本稿ではチャセンシダ科1属9種(未同定種を含む)、シシガシラ科1属2種、ツルキジノオ科4属7種、オシダ科12属26種、ヒメシダ科1属(HOLTTUMの分類では7属)20種を追加報告する。ヌリトラノオには葉先に無性芽をつけるものの他、つけない型がある。Blechnum vestitumは山頂近くの蘇苔林がやや発達した稜線に生育し、直立した根茎からは匍匐枝を出す。Acrophorus nodosusは川沿いや山腹の陰湿な斜面に、Arachiodes puncticulataやタイトウベニシダは林下のやや乾いた稜線や山腹斜面に生育する。Dryopteris subarboreaは地上や倒木上に生える大型のシダである。未同定の標本10354はD. subarboreaよりもさらに大型で、葉柄1m、葉身2.2×1.4m, 4回羽状中裂の巨大な葉を持ち、裂片はベニシダに似る。このシダは樹上に着生する。Polystichum gemmiparumは無性芽や葉裂片の形が屋久島以南のコモチイノデに似る。Heterogonium属では5種を加えたが、そのうちでH.calcicolaは石灰岩のBuntung山の陰湿な斜面に生育する新種である。Buntung山やNyapa山の石灰岩の崖にはえるTectaria brooksiiは単葉のシダである。マレーシア地域のヒメシダ科は1981年にHOLTTUMによってまとめられたが、4新種を今回記載することからもわかるように、資料の収集補充を積極的にすすめる必要がある。Thelypteris (Pneumatopteris) Krayanensisは山頂に発達した蘇苔林下に生育し、マレー半島のTh.unidentataに似るが、それに比べて小型で、羽片裂片に鋸歯が2・3あり、多細胞毛を密生する。Th. (Sphaerostephanos) longbawanensisは渓流沿い植物で、腺毛、短い下部羽片、網状脈などの特徴によって、この仲間の類似した渓流沿い植物から区別できる。Th. (S.) maximaはTh. megaphyllaに似るが、より大型である。Th. (S.) petiolataはS. norrissiiに近いが、中軸状に鱗片があり、羽軸に長短2種類の毛が密生する点で異なる。その他Th. sambasensis、Th. cuspidataなど研究を要する種もある。渓流沿い植物は東カリマンタンで普通にみられ、今回記録した種の中でも、Asplenium dichotomumは川床のコケ蒸した岩上の他、川沿いの樹幹上にも着生するので条件的な種であり、Ctenitis vilis, Tectaria hosei, Thelypteris (Mesophlebion) oligodictya, Th. longdawanensis, Th. (Pronephrium) aquatiloidesは真正渓流沿いシダ類である。なお、前稿(「植物分類地理」34巻、61項、1983年)で記載したLindsaea dimorphaの種小名はオーストラリア産の別種に対してBAILEYによって既に用いられているので、新らしくLindsaea kalimantanensisの名を与える。
- 1983-11-29