ネパール産ツツジ科植物の木質化した肥大根の解剖
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概要
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ヒマラヤ産ツツジ科の着生植物3種Agapetes serpens, A. incurvata var. hookeri, Vaccinium nummulariaにおいて, 水質化し肥大した根を解剖学的に調べた。それらの肥大した根の二次木部は, 大部分が広い多列放射組織によって占められ, それ以外の木部組織は狭い帯状部分に限られている。この基本的構造は調べた3種に共通してみられるが, いくつかの特徴がAgapetes属とVaccinium属とで異なっている。とくに目立つものとして, 放射方向に連なった著しく扁平な平伏細胞の集団が, 広い多列放射組織の柔細胞のあいだに散在しているという構造があり, それはAgapetes属にのみみられた。狭い帯状部分に限られる木部組織は道管, 繊維状仮道管, 軸方向柔組織, 単列放射組織からなり, いずれの要素も直径が小さい。この多列放射組織の大きな柔細胞は主に方形細胞であり, 薄壁であまり木化していない。この広い多列放射組織は, 単列放射組織の小さな直立細胞を形成していた放射組織始原細胞がより大きな柔細胞を形成するようになったことと, 木部通導要素を形成していた紡錘型始原細胞が柔細胞を形成する放射組織始原細胞に転換したことにより生じる。広い多列放射組織は水分貯蔵の働きをしていると考えられ, 著しく扁平な平伏細胞の集団は水平方向の養分の移動に関係していると考えられる。それがAgapetes属にのみみられるのは, 肥大した根の形状や大きさに関係しているもかも知れない。
- 日本植物分類学会の論文
- 1997-01-28
著者
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