マレイシアMuda灌漑地域の水稲直播栽培の確立に関する研究 : 第3報 Muda地域の水稲乾田直播栽培および落粒栽培における農作業および苗立ちの実態
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概要
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マレイシアMuda地域の水稲乾田直播栽培(前作水稲収穫時の落粒を含む)および落粒栽培の農作業と苗立ち実態を明らかにするため, 主としてA(1988年), BおよびC地区(1989年)の第1期作で調査を行った.1)本地域の水田は重粘土壌が多く, 乾燥すると固結するため, 耕起・砕土は困難である.2)3地区とも請負業者による大型トラクターのロータリー1回耕起が多く, 砕土は悪く, 発芽・苗立ちには不適とみられた.しかし, C地区では2回耕起, 均平および土壌の鎮圧が各約30%行われていたことは注目される.3)3地区とも乾田直播栽培田が多いが, B, C地区では落粒栽培田がそれぞれ約38%および約19%認められた.播種量は奨励量(60kg/ha)に比べて, やや増から約半量までの地区がみられた.コンバインによる前作水稲収穫時の落粒の内, 平均で約37%(約72kg/ha)が後作直播または落粒栽培水稲の発芽期に生存することが推察された.4)苗立ち調査前1か月間の降水量が約80mm以下の地区(A, B)では苗立ちは著しく不良であったが, 多い地区(C, 約140mm)の苗立ちは比較的良好であった.しかしC地区の約30%では苗立ち不足が指摘された.他方落粒栽培田は苗立ちむらが著しかった.5)耕起田は不耕起田より苗立ちが高まったが, 均平, 鎮圧および播種の各田では苗立の高まりがみられなかった.この原因として, 調査田では多くの要因が混在したため, それらの相互作用により処理効果が相殺されたと考えられる.6)Muda地域内の主要な乾田直播・落粒栽培の6地区における, 3か年平均の乾田播栽培苗立ち期の4,5月の雨量は, 良好な苗立ちに必要な140mm/月を上回った.しかし旱ばつ年には各地区とも下回り, 苗立ち不良が予測される.7)苗立ち向上のためには, 砕土を高める耕起法, 播種後の鎮圧および耕起等の技術開発, および落粒栽培から乾田直播栽培への切り替え等が重要である.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 1994-09-01
著者
-
和田 源七
国際稲研究所
-
平岡 博幸
熱帯農業研究センター
-
Ho N
Muda農業開発公団(mada)
-
Ho Nai
Muda農業開発公団(mada)
-
和田 源七
国際稲研究所:(現)日本工営株式会社
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