スリランカにおける1985年ヤラ期と1985-86年マハ期の水稲の不稔と称される現象について
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概要
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スリランカでは従来から中央高地を中心に水稲の不稔現象が知られ, 主に作物生理の面から研究されてきた.しかし, 近年は平地を含めて広範に不稔と称される現象が発生し, 水稲の生産にとって大きな障害と認められるようになり, 早急な解決が望まれていた.このため, 1985年のYala期と1985-86年のMaha期において, 現地水田で採集された不稔と称される試料についてその原因を解析した.また, 米粒の発育経過を基準にして被害粒の発育停止時期の推定を試みた.収集された不稔と称される試料は, 直播の播種量過剰で穂が小さくなったものを除いて, 一部で穂いもち, 墨黒穂病が観察された以外は穂の外観は正常であった.受精歩合は85Yala期の試料で77.2%(Batalagoda-2)から91.9%(Galamuna-2-a), 85-86Maha期の試料で81.0%(Dangella)から89.6%(Girandurukotte)にあり, 例外的に低かった3試料(Gokarellaほか)を除き, 受精障害が起きたとは認められなかった.一方, 整粒歩合は, 85Yala期で0.2%(Gelioya)から42.0%(Mandur), 85-86Maha期で1.9%(Batepola)から61.3%(Gokarella)と低く, これら不稔と称される被害の内容は発育停止粒の多発であった.玄米表面の症状から, 発育停止粒はタイワンクモヘリカメムシ(Leptocorisa oratorius)による虫害, 稲籾枯細菌病(Pseudomonas glumae)の病害及び特別な症状のないものに区分された.発育停止粒に占める前2種の被害粒の割合から, Batalagoda, Galamuna, Maha-Illuppallamaの試料はタイワンクモヘリカメムシ, Girandurukotteの試料は稲籾枯細菌病が被害の主要な原因であった.Bg-94-1,Bg-400-1の2品種の玄米の発育過程を基準に4試料について被害粒の発育停止時期を推定した結果, 発育停止粒の80%以上は開花後8日の間に発生していた.タイワンクモヘリカメムシによる被害はその後さらに昆虫学的研究で追認されたが, 稲籾枯細菌病については更に植物病理学の面から研究を進める必要がある.
- 1990-03-01
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