タンザニア・モシ県の伝統的アグロフォレストリー(キハンバシステム)下の殺菌剤施用土壌における銅汚染の実態
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概要
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タンザニア・モシ県では,伝統的アグロフォレストリーシステム(キハンバシステム)のもと,種々の一年生作物,根菜類,バナナ,その他の有用樹とともにコーヒー樹が同一の圃場内で栽培されてきた.1880年中頃のコーヒー樹の導入以来,その病害防除のために銅製殺菌剤(主にボルドー液)が用いられてきたが,これが土壌汚染を引き起こしているか否かに関する報告例はこれまでになかった.土壌中の銅の自然賦存量は,全銅で37.8〜97.8 mg kg^-1 (平均58.7 mg kg^-1, n=4)であったのに対し,コーヒー樹を持つキハンバシステム下の圃場では153.1〜451.6 mg kg^-1 (平均316.1 mg kg^-1, n=15),コーヒー樹のみの圃場では2308.1mg kg^-1に達した.土壌中の全銅量は,コーヒー樹の導入時期が古いほど多くなる傾向が見られた.日本における農耕地(水田)土壌の銅汚染基準である0.1M塩酸抽出銅125 mg kg^-1を参考値とした場合,調査地の圃場のうち2カ所でそれぞれ基準を上回る177.4 mg kg^-1と330.6 mg kg^-1が記録されたほか,幾つかで78.7〜97.0 mg kg^-1という基準値に近い値を示した.現時点でとりわけ危機的な状況に置かれていないにせよ,コーヒー栽培に伴う銅製殺菌剤の使用が続けば,キハンバシステムにおける他作物の生育や人々の健康への悪影響が懸念される.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 2002-12-01
著者
-
田中 樹
京大地球環
-
田中 樹
京大院地球環境
-
小崎 隆
京大地球環
-
MSAKY J.
Faculty of Agriculture, Sokoine University of Agriculture
-
田中 樹
京都大学地球環境学大学院
-
水田 潤
京都大学地球環境学大学院
-
小崎 隆
京都大学地球環境学大学院
-
Msaky J.
Faculty Of Agriculture Sokoine University Of Agriculture
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