2.番組制作技術(<特集>最近の放送技術)
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概要
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最近の番組制作機器の技術開発は目ざましいものがある.新しい機器の出現は新しい制作手法を生み, 新しい制作手法は次の技術開発をうながすという循環の中で, 番組制作技術も大きな変化を遂げている.この技術開発の軸となっているのは, 機器の小型軽量化とディジタル技術の進歩であると考えられる.まず機器の小型軽量化の面から見ると, 制作機器のキーデバイスであるカメラ, VTRの進歩が挙げられる.フィルムからビデオへの転換の原動力となったこの分野の技術開発は, ハンディーカメラからVTR一体型カメラへと進み, これまで中継車を利用して行っていた局外での番組制作が数人のスタッフで簡単にできるようになった.その結果, いわゆるVロケが多用されるようになり, 番組制作のいろいろな分野に影響を与えることとなった.スタジオ制作の分野では, Vロケ部分との異和感を少なくするため, スタジオ内でハンディーカメラが使用されるようになって来た.最近では標準・ハンディー両用型のカメラが実用化されている.また従来, スタジオの副調整室はスタジオフロアの上の階に設置されていたが, Vロケの制作形態により近い形にして, 副調スタッフとフロアスタッフの連携を良くするため, スタジオ副調整室をスタジオフロアと同一階に設けることも行われている.これらはすべてスタジオ制作におけるVロケ制作手法の導入といえる.一方, Vロケはカメラ1台, VTR1台を使用する, いわゆる1カメ1V方式が主流であり, カット撮りが主体となるためポストプロダクションの分野にも影響を与えている.多くの本数にわたる収録済テープの各々のカットを能率良く編集するための設備や, 撮影条件の違いによる微妙な色の違いを補正するための装置など, 多くの種類のものが開発され使用されている.次に, ディジタル技術の進歩は番組制作技術の面から見れば, ビデオスイッチャ, 特殊効果装置, 文字図形発生器, コンピュータグラフィック, PCM録音機などを実用化し, 番組内容の充実, 質の向上に寄与している.また, 目に見えないところでは小型VTRに多く採用されているアナログコンポーネント方式の色差信号の時間軸圧縮にもディジタル技術が使用されている.ディジタル技術は, 将来のテレビ放送システムの全ディジタル化へ向けて研究開発が進められている.すでにスタジオ用ディジタルテレビの符号化標準とディジタルVTR標準の2つがCCIRの勧告として出されており, 今後この勧告に基づいた種々な装置が実用化に向けて開発されるものと考えられる.テレビ放送システム全体がディジタル化されるには, まだ相当時間がかかるものと思われるが, クローズされた制作分野だけのディジタル化は早い時期に試行される可能性が高い.以上, 番組制作技術の現状を技術開発の2つの軸を中心として概括してみた.機器の小型軽量化の進展は番組制作形態というソフトウェア上の変化をもたらし, ディジタル技術の進歩はハードウェア上の変化をもたらしているといえよう.激しい技術革新の波の中で, 番組制作技術もひとつの曲り角にさしかかっているといえるのではなかろうか.
- 社団法人映像情報メディア学会の論文
- 1987-01-20
著者
-
杉村 忠彦
Nhk制作技術局
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池上 英雄
Nhk技術本部
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村山 捷昭
Nhk 大阪放送局
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久保田 泰雄
NHK制作技術局
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田村 吉弘
NHK制作技術局
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村山 捷昭
NHK送出技術局
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沢口 真生
NHK制作技術局
-
桜井 克征
NHK制作技術局
-
沢口 真生
Nhk
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