光アフィニティラベル法による薬物結合部位の同定と新規薬物標的の検索
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概要
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受容体や抗体,酵素などの機能性タンパク質は,特定の物質(リガンド)を認識し,独自の機能を発現している.リガンドがどのようなタンパク質を認識し(標的分子の同定),又はタンパク質構造中のリガンド結合部位がどこかを解析する方法は,大きく分けると分子生物学的手法とタンパク化学的手法の2つがある.前者,特に遺伝子点変異実験は機能に関わるアミノ酸残基をpinpointで同定できるため分解能に優れているが,どの点を変異させるかの選択がむずかしく,また変異によってタンパク質の構造変化が生じる可能性が常に付きまとっている.一方,リガンド誘導体を用いたアフィニティラベルで結合部位を解析するタンパク化学的手法は,現時点では分解能において遺伝子点変異実験に一歩譲るが,リガンドの誘導体さえ用意できれば未知の標的分子でも同定できる上,その結合部位さえも解析できる.したがって,両手法はリガンドと受容体の相互作用を明らかにする上で,本質的に相補うべき関係にある.我々は,タンパク質修飾法の1つ,光アフィニティラベル法を用いて,受容体上のリガンド結合部位や種々のリガンド結合タンパク質を解析してきた.本稿では,光アフィニティラベル法の応用例を概説するとともに,Ca^<2+>チャンネル上でのCa拮抗薬結合部位と経口糖尿病治療薬スルホニルウレア剤の新たな標的分子の同定についての我々の知見を紹介する.
- 公益社団法人日本薬学会の論文
- 2003-08-01