日本の高校生の価値意識の変化
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概要
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Social cynicism was examined to be prevailing among the Japanese high school students.The data were gathered through the research into 2826 high school students in Osaka.The findings showed high school students of today tended to be indifferent to social and political mechanism today and social class,achievement and sex had a strong relation with their socio-political value orientation.The research data were compared to the compatible data in 1975 and 1967 and young people were found to be more conservative in their life style and to prefer their own family life to their work.Based on these findings,the characteristics of young people today was discussed.本研究は,3つの課題研究をもっている。第1は,現代の日本の青年層は,以前とは違う生き方や考え方をもっていることが喧伝されているが,このことを主として政治的,社会的認識の面から検討を加えることである。第2は,そのような政治的,社会的認識はどのように構造化され,どのような変数と関連しているかである。第3は,時系列的にみて,今日の高校生の価値観は過去の高校生と比較してどのような特徴をもっているかである。ここで用いるデータは,1987年に行われた大阪の公立と私立計20校の高校生2826人を対象とした「高校生の意識と行動に関する調査」の結果である。この調査は層化抽出法で行われ,公私の比率,学科の割合,学校のランクの点で大阪の高校を代表するものである。現代の高校生は自分を「幸せ」で将来を「明るい」と感じるものが多い(表2,表3)。そして,社会や政治には漠然とした不満を感じながらも変化を望むものが少なく,政党支持も無党派が多いという社会的シニシズムが浸透しつつある(表4,表5)。このような社会的政治的志向を構造化するために主成分分析をもちいて分析した結果,①政治的無関心②権威主義志向③自己中心志向④安定生活志向の4つの軸が析出された(表6)。これら4つの軸に強い関連をもつ質問への回答を分析すると(表7),①の政治的無関心では,政治への参加意欲の低さと関心の薄さが,②の権威主義志向では,反権威主義的な志向が際だっている。③の自己中心志向では,社会生活より自分の生活を重視し,他者と積極的に関わらないとする「私生活志向」が強くみられた。また,④の安定生活志向では,仕事志向よりも家庭志向,幸せな生活を何よりも重視する志向が強かった。社会的政治的無関心は,どのような要因が関連しているのかをみるために,①の政治的無関心の主成分得点を個人毎に計算し,それを2値変数に変換したのち,林の数量化Ⅱ類によって分析を行った。その結果,政治的無関心は,アチーブメント,出身階層,性と関連していることが明らかになった(表8)。具体的には,高い社会的経済的背景をもち成績がよい男子生徒は高い政治的関心をもち,逆に,低い社会的経済的背景をもち成績が悪い女子生徒は政治的関心が薄いことが指摘された。本調査は,筆者が行った1975年調査と野村哲也が行った1967年調査と比較可能な項目を配置している。「生き方価値」がこれにあたる。これらの調査結果の比較によって次のことが明らかにされた。1967年に男子でもっともドミナントな価値であった成就型は,1967年以降,一貫して減少している。それと反比例するかたちで平凡型が,男女を問わずどのランクの高校でも一貫して上昇し,今日の高校生のもっとも一般的な生き方価値になっている。そして和合型,蓄財型も漸増傾向にある。今日の高校生は1967年や1975年の高校生よりも男女差,ランク差が小さくなったこと,高校生全体としては生き方価値が多様化したこと,かつて女性に一般的であった平凡型が男女とももっとも一般的な生き方価値としてみられることなどが明らかになった(図1-図10)。
- 大阪教育大学の論文