水曜海山の地球物理学的構造と海底熱水循環系(地球物理, <特集>海底熱水系における生物・地質の相互作用)
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概要
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「島弧型」熱水循環系が存在している水曜海山を対象に行なった海上地球物理調査, 深海曳航式地磁気探査, 地震波速度構造探査, 自然地震観測により, 次のような観測事実を明らかにした。1)西峯山体は, 78万年以後のブリュンヌ期に生成したもので, この付近では一番新しい。また, 火口斜面の崩落を起すような活動が山体形成後に起こっている。2)火口西側に磁化を失った領域が, 直径約800mの範囲に広がっている。3)P波速度が2.2kms^<-1>∿4.2km s^<-1>の層が海底下2kmまで存在し, この層では地震はほとんど起こっていない。4)震源は, 火口の直下5km∿10km(海底下3km∿8km)の範囲に集中しており, 中心部分が抜けている煙突状に分布している。このような観測結果を説明するために, 貫入したマグマが冷却するモデルを提案し, その妥当性を数値シミュレーションによって確かめた。数値シミュレーションでは, 貫入したマグマが, P波速度が比較的遅く空隙率が高いことが推測される浅部(厚さ2km)の熱水循環と深部の熱伝導との2過程で冷却される。深部の冷却過程では, 内側の冷却域と外側の温度上昇域が存在し, これによって生じる熱差応力を解消するために地震が発生すると考えると, 煙突状の震源分布が説明できる。また, 浅部では, 貫入したマグマが現在の熱水循環系の熱源であり, 数百年以上は熱水循環を維持する熱源となり得る。この熱源により, 熱水系の活動は, その熱水変質が直径800mの範囲の磁化を失わせる程度の期間持続していると推測できる。水曜海山の熱水循環系は孤立しているが, このように安定した期間存在しており, このことは, この熱水循環系における生態系の起源と進化を考える上で重要な制約を与える。
- 日本海洋学会の論文
- 2005-03-05
著者
-
島 伸和
神戸大学内海域環境教育研究センター
-
西澤 あずさ
海上保安庁海洋情報部
-
西澤 あずさ
海上保安庁 海洋情報部
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島 伸和
神戸大学内海域環境教育研究センター 海底物理学研究分野
-
川田 佳史
東京大学大学院理学系研究科
-
西澤 あずさ
海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室
-
川田 佳史
海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域
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