量子計算の実現にむけて : その現状
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概要
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なぜ, 今量子計算が注目されているのか. それは, 1994年に, 因数分解を, 桁数にせいぜい比例する程度の時間で行うことができる量子計算のアルゴリズムを P.Shor が発見したからである. もし, 実際に因数分解を高速に行えてしまえば, 現在インターネット等で用いられている RSA 暗号は, 全く役に立たないものとなってしまう. この量子計算とは, 古典力学に基づいた現在の計算機に対して, 量子力学の原理に基づいた計算機の概念であり, Feynman, Deutschらによって, 1985年頃に提案された. 量子計算の提案がなされた背景には, 将来量子状態を自由に制御できるかもしれない, という期待感のもと, 量子力学に特徴的な性質を活用したいという欲求があったといえる. その後の現在に至る10年間の量子工学の分野の進展により, 今では原子や光子の量子状態そのものを制御する技術が得られつつある. このような技術的環境が, 量子計算が現在注目されているもう一つの原因である.
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 1997-08-13