温泉地すべりについて(要旨)
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概要
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わが国の火山地帯には多数の噴気、温泉地帯が分布し、通常"温泉ヤケ"と称する特殊の荒廃地を生じている。ここでは岩石は特有の変質作用を受けて粘土化し、そのまわりの岩石はびらんして崩れ易い状態になっている。したがって温泉変質帯の分布はすなわち、温泉地すべり地帯の分布となり、小規模の崩壊性地すべりは慢性的になっていて、その数に至つては調査し得ない現況にある。たまたま規模の大きいものが発生し、直接的な災害を伴った場合に注目されているに過ぎない。温泉変質帯には、硫気作用による初生的産物である青黒粘土が深部にまでわたって分布し、その表面は滲透水の酸化作用によって白色粘土に変化している。青黒粘土は緻密で、地下水を滲透しがたいので、いわゆるすべり面が青黒粘土の上限に力学的に発生する。青黒粘土と白色粘土の上には周辺から崩落した岩魂や、岩礫と粘土の混合物である赤褐色の含礫土壌層が乗り、豪雨時には多量の水を包蔵して地すべりを発生する荷重として作用する。例えば、箱根の早雲山地獄は、長径500m内外の多少楕円形で1方が欠けたすり鉢状の地形の底に数ケ所の噴気露頭があり、崩れ落ちた土石が厚く堆積して僅かに見える下部熔岩は著しく変質していた。後の壁は80゜内外の絶壁で、その構成物は熔岩を峡む火山砕屑岩である。昭和23年7月26日午前10時20分頃の大崩壊は、後の壁の崩壊と数日間続いた豪雨による多量の地下水の湧出が温泉地すべりの引金となって発生したものである。
- 一般社団法人日本応用地質学会の論文
- 1960-06-06
著者
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