植生の違いによる風倒木の発生と斜面崩壊
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1998年9月21, 22日にかけて台風8号, 7号が本州に上陸し, 中部地方を中心として大きな風災害を引き起こした.とくに, 岐阜県七宗町では台風が通過して二, 三日後に集中豪雨が発生し, 台風で緩んだ地盤の多くの箇所で表層崩壊が発生し, それを引き金とした土石流災害が起こった.ここでは, 台風による風被害が山地森林の新しい植林地に集中していたことを述べるとともに, 風倒木による地盤の緩み状況を調べ, それがその後の豪雨による表層崩壊を発生させた原因であることを示す.森林植生の違いが斜面地盤の安定性にどう関与しているのか研究成果が少なく, 不明な点が多いのが現状である.一般的には, 保水, 土壌侵食防止効果が高く, 根系による地盤の緊縛効果, 杭効果が総合的に発揮される壮年期の混交, 複層林が有利とされている~(1).今回の研究成果はこれらのことを裏付ける結果となった.以下に調査の結果をまとめて示す.1)調査地においては風倒木被害は植林に集中しており(40〜60%の被害), 広葉樹の林では被害が少ない(1〜2%の被害).2)倒伏の被害の大きかった植生は, 基盤岩が1m以浅に位置し, 根鉢の深さが制限される地盤であった.また, 植林で間伐の行われていないところについても倒伏被害が多かった.これは間伐の行われていないところは根系の発達が悪かったためと推定される.3)風倒木のあった植林の地盤は, 表土のNc値が2以下と緩んでいることが明らかになり, 倒伏被害のなかった広葉樹地盤ではその緩みはほとんどなかった.4)風倒木地盤で表層崩壊が発生したのは, 地下水や表流水の集中しやすいやや沢地形の部分であった.5)倒伏地盤の斜面崩壊は風倒木を多量に含んでいるため, 多くの土石流を発生させやすいと考えられる.
- 1999-10-10
著者
関連論文
- バランス断面法の重力変形体への適用 : 山梨県北部・風化花崗岩の例(シンポジウム,テーマ「地すべりの初生と初生地すべりについて」)
- 市民社会にとっての地質技術とアウトリーチ
- 19.2004年新潟県中越地震に伴う芋川流域の地形変遷と土砂移動(一般研究発表会(口頭発表),2007年度秋季研究発表会)
- 2004年新潟県中越地震に起因する地すべりと土砂移動
- 四国室戸半島の海食崖における崩壊特性
- 25.山梨県北部,風化花崗岩における初生すべりにいたる変形様式とバランス断面(斜面崩壊・地すべり(3),口頭発表)
- 5.中越地震で発生したすべり面からのサンドダイクとすべり面の凝灰質砂岩(斜面崩壊・地すべり(1),口頭発表)
- 都市の安心・安全な斜面維持の取り組み
- ネパール最重要道路のハザードマップとリスク管理
- 20. 宅地造成地盤の災害事例と今後の危険度予測(リモートセンシング,一般調査,口頭発表)
- P16. 風化花崗岩の緩みと初生すべり(斜面崩壊,地すべり,ポスターセッション)
- 6. 山梨県北部風化花崗岩の変位率と地すべり(地すべり,口頭発表)
- 人工衛星DEMデータと光学データを用いた地すべり地形の評価
- 災害に起因する環境破壊の軽減(環境問題への挑戦(6))
- 四国, 中央構造線沿いの地すべりの発生と安定化
- 2007年度 第1回研究集会報告 : 地すべりとの共生を考える-地すべり地の環境理解とその付き合い方を探る
- 50. 中越,第三紀層地すべりの地形発達(地すべり,一般調査,口頭発表)
- O-277 第三紀層の地すべり地形発達史と変位率の関係(24.応用地質学一般,口頭発表,一般講演)
- 応用地生態学による自然環境の保全(環境問題への挑戦(3))
- 6.四国、中央構造線沿いの地すべり地形発達(地すべり,口頭発表)
- 自然斜面の安定問題における土の強度試験活用の現状と課題(斜面防災の変化・変遷)
- O-235 四国、中央構造線沿いの地震起源地すべり(25.応用地質一般,口頭およびポスター発表,一般講演)
- アンケートによる道路・河川・ダム事業の生態系と地盤環境保全の現状分析
- 四国御荷鉾地すべりの多様な生態系
- オムニスケープジオロジー : ネパールと四国の比較
- 植生を考慮した表層崩壊の特徴と崩壊予測(土構造物の維持管理 : 性能規定化に向けて)
- S-47 四国、中央構造線沿いの地すべりの発生機構((5)付加体の斜面地質学,口頭発表,シンポジウム)
- 破砕帯御荷鉾地すべりにおける地形・地質と土地利用(2)
- 破砕帯御荷鉾地すべりにおける地形・地質と土地利用(1)
- 火山地域の地形・地質の特徴と自然災害に対するリスクマネージメントによる土地利用 : 那須火山地域を例として
- 2004(平成16)年10月新潟県中越地震災害速報
- 神津島の地形・地質的特徴と2000年7月火山性地震による被災状況
- P76. 地域の社会基盤形成における地形情報の意義を視覚化した応用地質学的ガイドマップの作成(本部・支部,ポスターセッション)
- P13. ネパールの斜面ハザードと世界遺産の保全(地すべり,斜面崩壊,コアタイム,ポスターセッション)
- 古期地すべりの安定性
- 火山災害の発生機構とその被害から想定される災害廃棄物 (特集 災害廃棄物の発生と処理事例)
- 呉市街地の斜面崩壊と訴訟対応
- 北海道釧路地方の洪積台地周縁斜面の侵食速度と崩壊特性
- タイ・メコン河沿いの地盤環境
- 64. 二重山稜の発達する古期堆積岩山地における深層崩壊の発生・拡大過程 : 雨畑川流域における荒廃渓流の事例(斜面・地すべり(4),口頭発表)
- 50. 都市斜面の変遷と土砂災害 : 川崎市を例として(斜面・地すべり(2),口頭発表)
- 2. 調査・分類;スウェーデン式・平板載荷試験,コーン貫入試験 他,現地計測・計測技術,ボーリング・サンプリング(第39回地盤工学研究発表会)
- 根系層崩壊
- 暮らしとその安全のための応用地質
- 「メコン河沿いの開発と地盤環境問題の現状視察」報告
- 平成12年3月31日有珠山噴火 緊急調査団報告 噴火の経緯,被害状況,情報伝達・避難
- 植生の違いによる風倒木の発生と斜面崩壊
- 中越地震で発生した横渡地すべりにおける過剰間隙水圧の発生根拠としてのサンドダイクの発見 (特集 地震に伴う人工地盤の地すべり)
- 2.リスクとリスクマネジメント(地盤工学におけるリスクマネジメント)
- 北海道釧路地方の洪積台地周縁斜面の侵食速度と崩壊特性
- 滋賀県南西部に分布する風化花崗岩の表層崩壊の特徴
- 1998年台風4号による福島県白河地方での表層崩壊の特徴
- 地盤工学者のための地形・地質情報の活用法入門 : 9. 地形・地質情報の活用例(その3) : 表層地質(地層分布)
- 5.地盤リスクマネジメントと社会・経済システム(地盤工学におけるリスクマネジメント)
- 6.裁判例から見た地盤リスク(地盤工学におけるリスクマネジメント)
- 中越地震で発生した横渡地すべりにおける過剰間隙水圧の発生根拠としてのサンドダイクの発見
- 48. 山梨県北部風化花崗岩山地での斜面崩壊の特徴と植生回復を考慮した地域防災(環境・地下水(2),口頭発表)
- 30. 土層検査棒を活用した斜面の表層土砂流出防止工法の提案(斜面・地すべり(3),口頭発表)
- 24. 2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生地点の地形・地質的特徴 : 千葉県稲毛海岸平野の調査事例(特別セッション東日本大震災,口頭発表)
- 地盤技術者に求められる資格と資質(地盤技術者に求めるもの)
- 山梨県北部, 風化花崗岩における初生地すべりの変位率と内部構造
- 齋藤ほか(2011)「中越地震で発生した横渡地すべりにおける過剰間隙水圧の発生根拠としてのサンドダイクの発見」に対する討論
- DS-9 防災・環境・維持管理に役立つ最新の地盤環境調査法(ディスカッションセッション,第47回地盤工学会研究発表会)
- 齋藤ほか(2011)「中越地震で発生した横渡地すべりにおける過剰間隙水圧の発生根拠としてのサンドダイクの発見」に対する討論
- 災害に対応した法令の変遷と地盤リスクマネジメント(地盤災害と法令・リスクマネジメント)
- 地盤災害に係る廃棄物処理施設の事例(地盤災害と法令・リスクマネジメント)
- 地盤災害に係わる法令と裁判事例(地盤災害と法令・リスクマネジメント)
- 地盤リスクに関する保険制度と統一的評価手法の必要性(地盤災害と法令・リスクマネジメント)
- 齋藤ほか(2011)「中越地震で発生した横渡地すべりにおける過剰間隙水圧の発生根拠としてのサンドダイクの発見」に対する討論