容積補償法を用いた間接的連続血圧計測 : その測定原理と血圧バイオフィードバックにおける利用可能性

概要

論文の詳細を見る
動脈血管壁は,血管内圧[つまり血圧(BP)]によって外側へ伸展させられている。そこで,適当な桔抗圧を用いて動脈管壁を押し返してやれば,動脈の伸展が完全に解除された瞬間(すなわち血管壁の無負荷状態)に,この桔抗圧はBPと平衡するであろう。血管壁の無負荷状態は,桔抗圧を加えている際中に動脈で生じる容積振幅が最大となることから,検知可能である。この原理に基づいて,山越ら(1980)は,瞬時BPを測定する新たな方法を開発した。透過型の光電式容積脈波形が,手指の中節または基節部に装着され,血管床容積の変化が検知される。披験手指部は,水を封入した圧窄用チャンバに内蔵された,圧迫用カフの中に挿入される。このチャンバは,ダイヤフラムアクチュエータに接続され,さらに,シェーカに連結されている。したがって,被験手指部は,チャンバ内流体圧(つまりカフ圧)によって,加圧-減圧ができるようになっている。まず最初に,無負荷状態下の血管床容積に相当する,サーボ制御目標値が検知される。この値は,サーボ制御系を開ループ操作することで得られる。外部からの信号によってカフ圧が徐々に高められ,脈動成分の振幅が最大となった瞬間に,光電容積脈波の平均レベル値が検出される。この目標値が決定されたら,BPを連続測定するために,閉ループ操作が行なわれる。容積脈波信号は差分アンプへ導びかれ,目標値との差が求められる。こうして得られたサーボ制御誤差は,パワーアンプに導びかれる。その結果,パワーアンプの出力信号はシェーカを駆動し,ダイヤフラムアクチュエータを介して,カフ圧を制御する。このようにして,BPの変化によって生じる血管床容積のいかなる変化も,このサーボ制御系によって瞬時に補償される。血管床容積は目標値に保持され,カフ圧は瞬時にBPに追従する。本法では,収縮期と拡張期のBPが1拍毎に測定できるだけでなく,BP波形そのものが測定可能である。これまでになされてきた直接法との比較では,多くの正常血圧者や高血圧者において,良い結果が得られている。Riva-Rocci法と違い,本法では手指動脈を無負荷状態におくだけで,閉塞することがない。指尖の静脈圧がカフ圧と平衡すると,徐々に静脈帰還が生じる。したがって,BPの連続測定は,たいした苦痛もなしに長時間つづけられる。被験手指部はカフの中で適度に圧迫され,系全体の周波数応答も60Hzを越えるまで一様であることから,体動や姿勢の変化によってBP記録にアーチファクトが生じることは,めったにない。以上の結果から,本法は他のさまざまな間接法よりも優れていると考えられる。この本法を用いることによって,BPバイオフィードパック実験は,もっと容易に実施されるに違いない。
日本バイオフィードバック学会の論文
1984-06-30

容積補償法を用いた間接的連続血圧計測 : その測定原理と血圧バイオフィードバックにおける利用可能性

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク