SI-3 3. 類上皮細胞系細胞内ライソゾームの役割
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概要
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類上皮細胞が, 結核, サルコイドージスの病理学的表徴として基本的な細胞があり, 近年免疫学的機序と深いかゝわりがあることが指摘されて, 再び研究の対象に取り上げられるようになった。類上皮細胞の成因は, 未だ定説に至らないが, Sutton(1966)が, ニワトリの流血中単球の細胞培養により, これがマクロファージ, 類上皮細胞さらに巨細胞に変遷する過程の電顕像を報告しており, 一般にこの過程が支持されている。一方, 前単球, 単球, マクロファージの変遷過程に対してmononuclear phagocyte system(MPS)と名付けられている(Van Furthsら, 1972)。演者は, 類上皮細胞, 巨細胞が, このMPSに結核菌又はノカルディア菌, 特にこれらの菌体成分中糖脂質画分が加わって特異的に形成され, 免疫学的機序が関与すると更に強調されるものと考えている。この事実から, 単球, マクロファージ, 類上皮細胞, 巨細胞の細胞系を総称して類上皮細胞系(epithelioid cell system)と呼称している。類上皮細胞の微細構造上の特徴は, その細胞表面から突出した多数の長い突起があって, これらが相隣れる細胞と複雑な細胞間嵌合を形成することと, 細胞質内に豊富なライソゾームが存在することである。このライソゾームは, マクロファージの時期から豊富に存在するものである。今回は, 類上皮細胞系細胞のライソゾームが結核症あるいは, 結核菌に由来する免疫, アレルギーの成立機転で, 如何なる関与をしているか, 実験的結核モデルを用いて考察してみたい。BCGを接種した動物にみられる生物学的現象として, ツベルクリン反応が陽性となること, 注射局所に結核結節を形成し, 乾酪壊死に至り, 肺に空洞を形成すること, マクロファジ遊走阻止現象がみられること, 抗腫瘍性免疫が成立すること等が挙げられる。BCG生菌, 死菌あるいは結核菌毒性糖脂質をウサギ肺に接種して組織学的, 細胞化学的検討を行った。その結果から, 特にライソゾームの関与する機構をまとめると, (1)細胞内に貪食した結核菌, あるいは菌体成分を含む貪食顆粒の消化,分解に関与し, これに伴いマクロファージのライソゾーム活性を著しく上昇して活性化すると共に, 免疫源物質を形成することが推測される。(2)活性化マクロファージ内のライソゾームより細胞外に分泌されるライソゾーム酵素を含む所謂化学的作用物質による生物学的現象(結核性空洞の形成, 抗腫瘍作用)の成立に関与すること。(3)類上皮細胞系で, マクロファージの時期での異物貪食を主とする時期と, 老化した類上皮細胞の自己貪食を主とする時期とに分けることが出来, 細胞の分化にともない, ライソゾームとのかゝわりの機構が異なること。以上三点に分けることが出来る。
- 日本組織細胞化学会の論文
- 1977-10-20
著者
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