中年期の女性における子の巣立ちとアイデンティティ
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概要
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本研究は,41〜60歳の女性1041人を対象にアイデンティティ・ステイタスを質問紙で測り,子の巣立ちと母親のアイデンティティとの関連を横断的に検討した。その結果,母親が子の巣立ちを主観的に認識することと関連して,母親のアイデンティティは発達に向かうことが確認された。特に,第一子の巣立ちをそろそろだと感じ始める時期がその発達の起点であると示唆され,その段階において,気軽に相談できる友人はアイデンティティの拡散を抑制する働きがあった。また,母親として積極・肯定的な態度を強く特つことはアイデンティティ混乱と負の関係にあり,子の巣立ちを認めていても密着・献身的な態度を特つことは逆に正の関係にあった。職業との関連では,フルタイム勤務の人ではそれ以外の人よりも子の巣立ちに伴って達成方向のアイデンティティ・ステイクスヘと分布が偏ったのに対し,専業主婦では一人目の巣立ちが完了した段階でアイデンティティ拡散に偏った点が特徴的であった。この点に関して,フルタイムで勤務する人は,親役割と仕事役割が重複することによる葛藤が子の巣立ちによって解消されていくために,アイデンティティの転換が他の就業形態よりも積極的に表れたのではないかという可能性が論じられた。
- 2004-04-20
著者
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