子どもの自称詞の使い分け : 「オレ」という自称詞に着目して
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
子どもが使用する自称詞について,場面に応じた使い分けに着目して,京都市内の保育園においてアンケート調査(216家庭)と観察調査(5歳児クラス男児9名)を行った。その結果,第1に,2歳でほとんどの子どもが対称詞と同じ自称詞(愛称・名前)を用いることが示された。第2に,男児はその後「愛称・名前」と「オレ」「ぼく」を並行して使い,幼児期は両親に「愛称・名前」,友達に「オレ」を用いる傾向,学童期中頃に両親に「ぼく」,友達に「オレ」を用いる傾向が示された。また「オレ」の使用は友達関係をとおして伝播することが示された。女児は学童期になって「わたし」の使用が増加しはじめるものの「愛称・名前」の使用が学童期にも続き,両親と友達の間での使い分けはほとんど見られなかった。第3に,年下のきょうだいには年齢にかかわらず親族名称が使用される傾向が示された。第4に,男児が保育者に対して「オレ」を使用するのは,主張したり自慢する場面のみであり,日常的には「ぼく」を使用していること,友達にはどの場面でも「オレ」も「ぼく」も使うことが示された。第5に,家庭で「オレ」を使っている自閉的傾向の男児が保育園で「オレ」を使用しなかったことから,自閉症児にとって「オレ」を用いての自己主張が難しいことが示唆された。こうした自称詞の使い分け方から,男児は,相手や状況や内容に応じて,ふさわしい自称詞を選択していることが示された。
- 2003-04-20
著者
関連論文
- 子どもの自称詞の使い分け : 「オレ」という自称詞に着目して
- PC07 クラス文化に規定された自称詞の使い分け : 「オレって言ったらヒゲが生えるんやで」(発達,ポスター発表C)
- P98 保育園における「かみつき」をいかにして減らすか : 保育士を対象とした「かみつき」アンケートの分析から(ポスター発表II)
- 『子どもの思いにこころをよせて』 : 0,1,2歳児の発達, 西川由紀子, かもがわ出版, 2003年8月
- 『シリーズ子どもと保育 3歳児』, 秋葉英則,白石恵理子監修,大阪保育研究所編, かもがわ出版, 2003年1月
- P57 発達障害のある子どもを含むクラスの 3 年間の保育 : 感情のコントロールの難しい Q くんの発達をとらえて
- 5歳児女児は自称詞をどのように使っているか? : 「うち」使用ブームに着目して
- 発達 N-6 子どもたちは本をどのように楽しんでいるか : 「ズッコケ3人組」シリーズの魅力
- 子どもの女性語使用状況の変化
- 発達 14-PB3 子どもの使用する一人称の変化
- 幼児の物語産出における「語り」の様式
- P2162 幼児期における物語ことばの産出 : 紙芝居作成条件とテープ録音条件の比較
- 発達2126 幼児期における物語ことば・民話ことばの獲得
- PD102 幼児の物語産出における「語り」の樣式の変動
- 234 幼児の物語産出における「語り」の様式と物語構成度の関連(発達A(7),口頭発表)