幼児の物語産出における「語り」の様式
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概要
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本研究では, 絵本を手がかりとした物語産出課題場面において, 幼児が使用する「語り」の様式の差異に注目し, 物語的語りと情報伝達的語り, それぞれの「語り」の様式の特徴を明らかにすることを目的とした。実験1では, 3・4・5・6歳児52名を対象として, 「語り」の様式が安定する時期を検討した。その結果, 4歳半以降で一定の「語り」の様式を用いて作話することが可能になることが示された。実験2では, 4・5・6歳児50名を対象として各「語り」の様式の特徴を検討した。その結果, 物語的語りを用いたプロトコルでは, 叙述内容は物語の骨格がとらえられ, また, 物語展開を精緻化する表現が用いられること, 叙述形式としては接続詞, 副詞が多く用いられ, 標準語的アクセントが使用されることが示された。また5歳半以降では「語り」の様式に応じて叙述内容に差が出る傾向が示された。実験3では, 実験1に参加した4・5・6歳児のうち19名を対象として, 3歳児におはなしをするという状況で同一課題を繰り返し実施した。その結果, 実験lと実験3で物語的語りと, 情報伝達的語りの双方を使用した被験児が5歳半以降にに3名見られ, テスターが物語を語ることを要求しているのか, 情報を伝達することを要求しているのかという課題場面の解釈に応じて「語り」の様式を選択している可能性が示された。以上の結果にみられた5歳児の特徴を, 課題場面の解釈と物語産出能力の関連において考察した。
- 1995-12-10
著者
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