歩行開始期における母子の葛藤的やりとりの発達的変化 : 母子における共変化過程の検討
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概要
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本研究ではK児と母親の日常生活場面を,Kが15〜27カ月齢の約1年間観察し,両者の葛藤的やりとりの縦断的変化を検討した。母親の非難・叱責に対するKの情動反応と母親の対応の変化に着目して分析を行った結果,3つの時期が抽出された。I期:簡潔な言葉や情動表出を介して母親からKに行為の社会的意味(行為の是非や謝罪・修復の必要性)が伝えられる。Kからは快情動や緊張が示されることが多く,自発的な謝罪・修復はまだみられなかった。II期:非難・叱責に対するKの反応として不快情動が多くみられたが,一方では母親の謝罪・修復の要求に対する従順さや自発的な謝罪・修復行動もみられた。母親には,Kの行為に意図や責任を帰属させる発言がみられた。II期には母親の情動表出や言葉の摸倣を通じて,Kに行為の社会的意味が取り入れられ始めたものと推察された。III期:非難・叱責に対するKの情動反応に分化が認められ,怒りに関連した行動(言語的距離化や謝罪・修復の拒否)と罪悪感に関連した行動(自発的な謝罪・修復)の両方がみられた。母親には,Kにより理解や譲歩を求める対応(交換条件や脅し,距離化)がみられた。III期には,母親とKの間で意図や心理的・物理的距離の相互調整が始まったものと推察された。総じるとこの時期には,子どもの情動分化と理解力の発達,母親の対応変化の三者によって,母子のやりとりが相互調整的なものへ再組織化されることが示唆された。
- 2002-12-20
著者
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