高齢ラットの膀胱利尿筋の無機イオンに対する反応

概要

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高齢化にともなう膀胱平滑筋の筋細胞自体の収縮力,細胞膜の透過性の変化を研究する目的で,マグヌス法を用いて高齢ラットにおける無機イオンに対する反応性を実験した.高齢ラットは16ヵ月齢と24ヵ月齢のものを,コントロールとしては6ヵ月齢のものを使用した.その結果,以下の実験成績が得られた.1) Caイオンに対する収縮反応性は16ヵ月齢,24ヵ月齢でコントロコールに比較して有意に低下し,また最大収縮値の1/2に達する時間(T_<0.5>)も有意に延長していた.2) Kイオン,Baイオンに対する反応は3群問に有意差はなく,基本的な筋の収縮力に差はないものと判断された.3) Mgイオンは平滑筋に対して濃度依存性に弛緩作用を示した.しかしその反応性は3群間に有意差は認めなかった.以上の実験データは,高齢ラットの膀胱を構成する平滑筋細胞膜の,Caイオンに対する透過性が低下していることを示唆する.ヒト高齢者においても同様の機能的変化が発生するならば,この現象は膀胱収縮力の減弱に関与する要因として重要な役割を果たしていると推測する.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1990-06-20