ヒト腎癌細胞への遺伝子導入の検討

概要

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腎癌におけるc-myc遺伝子等の役割を探る時に,それの発現の低いヒト腎癌細胞株のACHN細胞へのc-myc遺伝子等の導入が,その細胞をどのように形質転換させるか調べることが可能なら,非常に興味ある結果の得られることが期待される.その第一歩として,外来性の遺伝子を細胞内に導入できるという電気穿孔法を用いて,ネオマイシンに強い感受性を示すACHN細胞へのネオマイシン耐性遺伝子導人の可否等について,基礎的検討を行なった.方法として,ACHN細胞とSV40のpromoter付きネオマイシン耐性遺伝子をSaline G液内に混和し,電場パルス発生装置で電気穿孔を行なった.その後細胞をネオマイシン存在下で培養し,約3週後に得られたコロニー,即ちネオマイシン耐性に形質転換した細胞数を算定した.結果は電気穿孔法にてACHN細胞への遺伝子導入が充分に可能であることが示され,処理細胞密度,DNA濃度,初期電場強度が高いほど,形質転換頻度も高く,1×10^7cells/ml,1μgDNA/10^6cells,2KV/cmの条件下で細胞当たり,1.3〜3.3×10^<-4>であった.今後この方法で,c-myc遺伝子等の癌遺伝子をACHN細胞に導入しその表現型の変化を調べることで,癌遺伝子の役割等について追求できるものと思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1989-09-20