ヒト陰茎の血管構築の研究 : コンピューター画像処理によるヒト陰茎海綿体よりの血液流出機構の検討

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ヒト陰茎の勃起およびその維持は,陰茎海綿体洞への流入系動脈の弛緩と血液流出系静脈の積極的な収縮によるとする説と,静脈側には積極的な閉鎖機構はなく,勃起およびその維持はあくまで流入する血液量によりコントロールされているとする説とがある. そこで,今回は,この血液流出系の血管構築を明らかにするために,autopsy時に入手できた陰茎をホルマリン固定し,この連続切片をH-E染色後,光学顕微鏡での観察および,コンピューターによる3次元画像処理を行い,海綿体洞より流出する静脈の構築を検討した.その結果,流出静脈系には弁構造はみられず,また,海綿体洞より出た静脈は白膜の直下を少し走った後,白膜内を陰茎長軸方向へ白膜外に向かって斜走して白膜上の静脈へ流出しているものが観察された.以上のような構築から考えられることは,海綿体よりの血液流出の抑制は,静脈の積極的な作用ではなく,海綿体内に血液が通常以上に流入すると,海綿体の容積が増加し,自腹直下を走る静脈は海綿体洞と白膜の間で圧迫され,また陰茎海綿体白膜が伸展し,白膜内を斜走する静脈は圧迫されて血液流出が妨げられ,勃起が成立,維持されると考えられる.そして,動脈血流入が勃起維持量を割るようになると,海綿体の容積は減り,白膜の伸展が軽減されて静脈血の流血が増し,勃起が消退するものと考えられる.このようにヒトでは,勃起はあくまで動脈系の作用が主体で,二次的に静脈系が駆血されるものと思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1989-09-20

ヒト陰茎の血管構築の研究 : コンピューター画像処理によるヒト陰茎海綿体よりの血液流出機構の検討

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