放射線晩期障害に起因すると考えられた膀胱回腸瘻の1例

概要

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膀胱回腸瘻は比較的稀な疾患である。今回我々はその中でも特に〓な晩期放射線障害に起因すると思われる膀胱回腸瘻の1例を経験した。症例は49歳・女性,主訴は尿老濁。平成5年1月より主訴が出現,同年3月からは尿中に食物残渣の混入を認めたため当科を受診した。入院精査の結果,膀胱回腸瘻と診断し回腸切除・回腸結腸吻合・膀胱部分切除術を施行した。術後縫合不全にて回腸瘻を造設し高圧酸素療法を開始,一旦は軽快傾向を示したが,消化管出血をきたし死亡した。切除腸管は,組織学的に粘膜下層の線維化と小〜中動脈を主体とした線維性肥厚およびフィブリノイド物質の沈着を認めた。また既往として18年前に子宮癌にて広汎子宮全摘両側付属器摘除術及び術後放射線療法を施行されており,晩期放射線障害による膀胱回腸瘻と推定した。膀胱回腸瘻本邦報告例46例中,原因について記載のある29例について検討すると,晩期放射線障害を原因とするものは3例のみで,組織学的所見から診断した症例は自験例のみであった。また治療にあたっては障害を受けた腸管にはなるべく手術操作を加えず,人工肛門造設等の姑息的手術を行うべきと思われた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1996-09-20