腎細胞癌で隣接臓器合併切除を施行した7症例の臨床的検討

概要

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我々は, 術前画像診断の結果で浸潤性腎癌と診断され, 腸管や他の隣接臓器の合併切除を受けた症例を7例経験し, その臨床経過を要約した.また, 隣接臓器への浸潤や転移の割合を, 日本病理剖検しゅう報から検索した.7症例中6例に遠隔転移を認めず, 根治術として局所の広範囲切除を施行した.特に1例では直接浸潤による腎盂直腸瘻で敗血症が発症しており広範囲切除の適応となった.病理診断の結果, 7例中4例に直接浸潤が認められ, 他の3例のうち, 2例がpT2, 1例がpT3であった.術後新たな転移巣が全例に認められ (2-30カ月, 平均12.3カ月), 5例が平均14.2カ月生存後死亡した.しかしさらに転移巣の切除を受けた3例中, 肺転移巣切除の2例 (原発巣pT4とpT3) は, その後19および72カ月間, 新たな再発なく生存中である.転移の早期出現と, Spindle cellの混在が予後不良の因子と予想された.隣接臓器浸潤の症状を有する症例に対し, 特に転移のない場合には, 広範囲合併切除を最初から否定するのではなく, その適応は, 患者個々の状況により決定されるべきであろうと考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1995-07-20