腎細胞癌における HLA class II antigenassociated invariant chain の発現

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主要組織適合抗原(MHC抗原)は種々の免疫反応において重要な役割を果たしている.そのうちクラスII分子は抗原提示細胞がCD4陽性ヘルパーT細胞に抗原を提示する際に拘束分子として働き,一方では宿主と移植片のクラスII分子の違いにより移植片の拒絶の原因ともなる.また,実験腫瘍の系では腫瘍細胞上でのクラスII分子の発現が免疫原性の増強につながることが報告されている.クラスII分子は細胞内ではその機能に重要な役割を果たすと考えられているHLA class II antigen-associated invariant chain (Ii)と結合している.腎細胞癌と宿主の免疫反応の関係を検討するため,60例の腎細胞癌に対し,Ii,クラスII分子,クラスI分子の発現および腫瘍内浸潤リソパ球の程度について検討した.免疫組織学的検討の結果,Iiは正常尿細管上皮には陽性染色を認めず,腎細胞癌では60例中53例に種々の程度に認めた.クラスII分子の発現と比較すると,おおよそDR≧Ii≧DP≒DQの順で発現していた.また,浸潤リソパ球数が多いほどIiの発現が有意に増強していた.このことより,Iiが同時に発現されるクラスII分子を有効に機能させ,腫瘍の免疫原性を増強し,リソパ球浸潤をより強く誘導しているということが考えられる.また,IiがIFN-γにより発現の増強または誘導が得られることが報告されており,TILの産生するサイトカインや治療目的に投与されたIFNがIiの発現を増強し,腫瘍の免疫原性を高めることができる可能性が示唆された.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1993-06-20

腎細胞癌における HLA class II antigenassociated invariant chain の発現

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