尿中濃度を用いたパラコート中毒の重症度指数設定に関する研究
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概要
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従来パラコート中毒患者の予後予測には血清中パラコート濃度を基準とした指標が用いられており,数量的に明示可能な重症度の新しい指標としてSIPP(severity index of paraquat poisoning, 来院時血清パラコート濃度×服毒から集中治療開始までの時間)を報告した.しかし,尿中パラコート濃度を用いて検討した報告はみられていない.尿中パラコート濃度を指標として予後予測ができなかった理由として,腎機能低下に伴って尿中パラコート排泄能も低下すること,尿中パラコート濃度から予後予測を行うための客観的な指標がなかったことが原因としてあげられる.そこで,SIPPと同様に尿中から重症度を評価する指標としてU-SIPP(urinary severity index of paraquat poisoning, 来院時尿中パラコート濃度×服毒から集中治療開始までの時間)を考案し腎障害の程度の指標としてクレアチニン・クリアランス(Ccr)を用いることによって,尿中パラコート濃度からパラコート中毒患者の予後の予測が可能か否かについて検討を行った.血清中パラコート濃度を用いた場合の検討結果と比較し以下の結論を得た.1)生存群,呼吸不全死群,循環不全死群で分類した予後3群はCcr≧20ml/minであればSIPPと同様にU-SIPPによっても明瞭に分類可能であった.2)Ccr≧20ml/minであれば生存時間とU-SIPPとの間には強い負の相関がみられた.3)Ccr≧20ml/minであれば初診時の血清中パラコート濃度と尿中パラコート濃度間には強い正の相関がみられた.4)Ccr≧20ml/minであれば,DHP治療中でも血清中パラコート濃度と尿中パラコート濃度間には強い正の相関がみられた.5)利尿剤に充分反応すれば,尿中パラコート定性分析を応用した定性希釈比色法(半定量法)でパラコート中毒患者の予後予測が可能であるとおもわれた.
- 1989-06-20
著者
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