陣旧性神経因性膀胱に対する自己導尿法の検討 : 脊損例を中心に
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概要
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自己導尿法は, 陳旧性の神経因性麗胱に対して有効な管理法といわれている.しかし脊損例の大部分では, 尿路治療の目的は排尿訓練からバランス膀胱を獲得することにあり, 自己導尿自体はそれに至る一時的な治療法とされてきた.今回74名の陳旧性神経因性膀胱患者に自己導尿治療を行ったが, そのうち46名は脊損陳旧例である(41名対麻痺, 5名四肢麻痺).その結果尿失禁は36名(48.6%)で改善し, 悪化は1名(1.4%)のみであった.特に自動型膀胱の28名中15名(58.6%)で反射性収縮による尿失禁が改善し, さらに抗コリン剤を併用すると18名中14名(77.7%)に有効であった.尿路合併症は36名に生じていたが, 膀胱変形は13名中4名, VURは8名中5名, 水腎症は13名中6名で改善した.44名は合併症の悪化はなく, 1名のみ各導尿間に高圧の反射性収縮が生じて水腎症が悪化したので, TUR-Bn, TUR-P及び外括約筋前方切開が必要であった.自己導尿中の尿感染率は56.7%で, 導尿前は50.5%と, 両者に有意の差はたかった.以上より陳旧性神経因性膀胱では, 自己導尿法は尿失禁(特に自動型膀胱)と, 尿路合併症の治療に有効であるといえる.しかし中には, 強い反射性収縮やコンプライアンス低下のため, 膀胱の高圧状態が改善されず, 合併症が悪化するものもある.又, 慢性の尿感染は自己導尿のみでは必ずしも改善するとは言い難い結果であった.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1988-01-20
著者
-
田中 誠
広島赤十字
-
高橋 康一
総合せき損センター尿器科
-
岩坪 瑛二
総合せき損センター泌尿器科
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田中 誠
総合せき損センター泌尿器科
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岩坪 瑛二
労働福祉事業団総合せき損センター泌尿器科
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岩坪 瑛二
総合せき損セ
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