脳血管障害発作時,急性期および回復期の排尿障害に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
脳血管障害患者66例(脳梗塞/脳出血:48/18,男/女:30/36)を対象に,発作直後の排尿障害,急性期の膀胱内圧曲線と外尿道括約筋機能(指標は外肛門括約筋緊張度と球海綿体反射)を検索し,その排尿自立までの変化,脳病変の状態,意識および運動障害と排尿自立との関連について検討した.CTにより脳病変を,大病変(大脳半球の1/3以上)および小病変(1/3以下)に分け,大脳基底核(BG)と内包後脚(IC)の病変の有無を確認した.排尿状態は正常,急迫尿失禁,溢流性尿失禁および尿閉に分類した.発作直後は溢流性尿失禁34例,急迫尿失禁13例,尿閉17例,正常2例であった.大病変の27例中19例,意識障害中等度以上の24例中18例が溢流性尿失禁を示した.急迫尿失禁は13例中12例にBGに病変を有し,hyperactive bladder (HB)が多く,外尿道括約筋機能が低下していた.尿閉の多くはBGにもICにも病変がなく,inactive bladder (IB)が多く,外尿道括約筋機能低下を認めた.溢流性尿失禁の半数はBGとICに病変を有したが膀胱尿道機能は正常を含む多様性を認め,本来の神経障害による排尿状態に対する意識障害の修飾が推定された.急性期はnormal bladder (NB) 27%, HB 33%, IB 40%であったが,排尿自立時はNB 33%であった.外尿道括約筋機能はほとんど変化せず急性期の外肛門括約筋緊張度は正常11例,低下18例,亢進1例,球海綿体反射は正常13例,低下15例,亢進2例で,亢進例は排尿自立しなかった.排尿非自立9例中脳梗塞で大病変であったものが6例と多く,発作時の溢流性尿失禁,急性期のHB,外尿道括約筋機能亢進は排尿自立に不利な所見であった.排尿自立例では溢流性尿失禁の平均自立病日は53.7±9.7で急迫尿失禁28.7±6.9および尿閉34.3±9.1に比し有意に長かった.また下肢運動機能の回復と排尿自立時期はほぼ一致していた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1986-09-20
著者
関連論文
- ストレス尿失禁に対する塩酸ノルエフェドリン(α受容体刺激剤)の臨床効果
- 片麻痺患者の排泄障害と排泄訓練 (内科医に必要なリハビリテ-ションの実際) -- (脳血管障害)
- 8.脳卒中患者の排尿障害(第2報) : 発症後1〜2.5年後の経過観察(脳卒中)
- 3. 脳卒中急性期の排尿障害 : 運動障害の回復との関係について(脳卒中)(第21回日本リハビリテーション医学会総会)
- 脳血管障害発作時,急性期および回復期の排尿障害に関する研究
- 尿路結石の排石誘発法 : 猪苓湯・電極板通電治療法の1年間の成果と反省