ヒト停留睾丸の精細管壁に関する電顕的研究
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概要
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ヒト停留睾丸18例を対象として,停留によって組織的変化が生ずるとおもわれる精細管壁を電顕的に観察した.一般に,電顕的に精細管壁を観察すると,まず基底膜と固有層にわけられるが,さらにこれらを微細にみると基底膜は透明層,級密層,網状層の3層に,固有層は非細胞層,細胞層の2層,全5層に区分できた.睾丸の停留によっておこる各層の組織変化は,基底膜では陥入,蛇行,不明瞭化,多層化,突起,肥厚で,固有層では非細胞層および細胞層のcollagen fiberの増生による肥厚が認められた.観察時の年齢によって,これらの変化をみると,基底膜の陥入像は3歳例より,蛇行は4齢例より,不明瞭化は3歳例よりみとめられ,多層化および突起像は17歳例以降の症例で観察された.基底膜の肥厚は2歳児の停留睾丸で小児対照例に比し,1.5倍であり,検索時の年齢がすすむとともに肥厚度は増加傾向を示し,成人例では対照例の約2から4倍に肥厚していた.これらの基底膜の形態的変化は基底膜保有細胞であるSertoli細胞の機能を反映していると考えられ,したがってヒト停留睾丸ではすでに2歳頃よりSertoli細胞に何らかの機能的変化が起っているものと思われる.停留による固有層の組織変化では,加齢とともに肥厚が認められた.これは細胞層のcollagen fiberの増生,および非細胞層における精細管壁細胞の細胞突起の間隙に存在するcollagen fiberの増生によるものであった.その肥厚度は小児停留睾丸例では小児対照例に比し約1.3から5倍で,成人停留睾丸例では成人対照例の約3倍であった.以上,停留睾丸における精細管壁の変化は,電顕的には,すでに2歳例より認められ,従来より指摘されている変化より,さらに早期に病的変化が発現していることが判明した.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1984-10-20
著者
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