移植腎の急性拒絶反応時における自由水クリアランスの臨床的意義について
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概要
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金沢医科大学病院において,1975年3月より1980年12月までに46例の生体血縁者間の腎移植術が行われた.1例のみに両側の固有腎摘除術を施行した.このうち,19例を対象として移植後の腎機能を経時的に測定した.19例に延べ33回の急性拒絶反応が認められ,拒絶反応の判定指標として他の指標と併せて,殊にfree water clearanceについて検討した結果以下の点が判明した.拒絶反応の48〜72時間前にfree water clearanceの有意の変動(p<0.05)が認められ,拒絶反応の早期診断に重要である.osmolar clearanceの変動も拒絶反応の診断に重要である.拒絶反応の際に,EFNaについてはほとんど変動がみられず,EFkの上昇とU/P creatinineの減少が認められたが有意ではなかった.拒絶反応と判定された時点におけるnegative free water clearanceの良好な症例ほど,拒絶反応よりの回復が速やかであった.また,osmolar clearanceについても同様のことが観察された.術後早期の拒絶反応の認められない時期において,HLA-C matchの症例はHLA-A matchに比べてnegative free water clearanceは低値を示した.移植直後には,19症例の約半数はpositive free water clearanceを示したが,術後4日目には全例共にnegative free water clearanceを呈し,この状態は急性拒絶反応に至るまで持続した.以上のごとく,急性拒絶反応の判定にはnegative free water clearanceの減少が重要であり,早期に出現し且つ信頼性のおける検査法であり,また拒絶反応よりの回復性をみる上でも重要な指標であると結論づけられる.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1981-10-20
著者
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