無症候性蛋白尿・血尿患者の予後に関する臨床的研究
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概要
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1975年12月から1985年12月までの10年間に施行した腎生検症例311例のうち,受診動機が無症候性蛋白尿・血尿(chance proteinuria and/or hematuria,以下CPHと略す)であった174例を対象として,生検時の臨床検査値・尿所見・腎機能検査値・病理診断から予後と関連する因子の有無について検討した.また,CPH症例の多数を占めたIgA腎症についても受診動機を含め同様の検討を行った.CPH症例の尿所見は血尿・蛋白尿をともに示す群が60.4%と最も多く,血尿のみは3.4%に過ぎなかった.CPH症例の10年の腎機能安定率は81%であり,尿蛋白1g/日以上の群で有意に腎機能悪化症例の割合が多かったが,血尿とは相関が認められなかった.IgA腎症はCPH症例の47.7%を占め,本症のCPH群とnon CPH群を比較すると,CPH群の方が年齢が若く,腎機能も良好で病理組織では瀰慢性メサンギウム増殖の程度が軽度であった.また,10年の腎機能安定率ではCPH群81%に対し,non CPH群63%であった.さらに,CPHで発見されたIgA腎症のなかで,腎機能安定群と悪化群の比較では,安定群の方が腎機能も良好で,蛋白尿・病理組織変化も軽度であった.以上から,CPH症例の予後に関連する因子は,臨床検査的には尿蛋白量であり,病理学的変化も重要な因子であることが判明した.このため,CPH症例とくに蛋白尿を有する症例では,定期的に外来受診させ,尿蛋白の増悪(1日尿蛋白として1g以上)が認められたら積極的に腎生検を行うべきであると思われた.また,腎生検によりIgA腎症の診断がなされた場合は,長期に観察を行い,場合によっては再生検を行って病理変化を観察する必要があると考えられた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1992-08-20
著者
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