in vitroにおける泌尿器系悪性腫瘍に対する上皮成長因子(EGF)の影響

概要

論文の詳細を見る
現在までに樹立されている4つの膀胱移行上皮癌株,1つの膀胱扁平上皮癌株,5つの腎細胞癌株と3つの前立腺癌株を対象として,in vitroでの上皮成長因子(EGF)の影響及びEGFレセプター数とメトトレキセート,ヴィソブラスチン,アドリアマイシン,シスプラチンとエトポシド(VP16)を用いた制癌剤感受性試験の結果との間の関連について検討を行なった.それぞれの細胞株に対する影響は,細胞増殖の指標であるコロニー形成能の結果,EGF濃度がO.1ng/mlでは膀胱扁平上皮癌において,コントロールに対し169.0%の増殖を見た.又,腎細胞癌ではEGF濃度1ng/mlで2.9%〜79.1%のコロニー形成能であった.一方,^125<I>-EGFを用いたレセプターアッセイの結果,EGFレセプター数の多い癌細胞株はVP16に対して,より感受性が高かった.今回の結果はin vitroにおけるEGFが,膀胱扁平上皮癌に対しその増殖を促進し,その一方で腎細胞癌ではその増殖を抑制する事が示唆された.またEGFの作用とレセプター数及びレセプターとEGF間の親和性との間に関連はみられなかったものの制癌剤に対する感受性との間では,EGFレセプター数がVP16に対する低抗性と関連している可能性が推測された.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1990-10-20