長期観察例における超音波計測結果よりみた前立腺肥大症の進展機序

概要

論文の詳細を見る
われわれは、経直腸的超音波断層法による超音波計測を用いて、前立腺肥大症患者16症例の長期(最低6年、最高8年)観察を行った。この16症例の経直腸的超音波断層像を検討し、以下の知見を得た。1)前立腺肥大症長期経過観察において、16症例中3例の前立腺重量はほぼ連続的に増加し、残り13例は、その前立腺重量にあまり変化はみられなかった。2)肥大症前立腺重量の加齢による推移をみると、重量の増加した3例はいずれも60歳代であり、70歳代の症例はおおむね重量に変化はなかった。これは、肥大症前立腺重量は加齢により常に増加しつづけるという従来の常識的な考えに反するものであった。3)16症例の経直腸的超音波断層像の仮想円面積比の年次的推移を検討すると、仮想円面積比0.8を境界線として、常にそれよりも大きい症例群と常に0.8より小さい症例群に明確に分けられた。従来より、仮想円面積比が0.75以上の前立腺肥大症症例でありながら、病的残尿を生じないものが多数あることが論じられてきたが、今回われわれが観察した中で仮想円面積比が常に0.8以上であるという症例群が、まさにこの症例に相当する。この病的残尿発生に対して高いpotentialをもった症例群を今後もさらに経過観察していくことは、前立腺肥大症の排尿障害の病態を知る上で必要であることを認識した。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1984-07-20

長期観察例における超音波計測結果よりみた前立腺肥大症の進展機序

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク