顕生代の地球表層環境変動 : 気候, 生物イベント物質輸送, そしてスーパープルーム
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概要
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顕生代の間の5億7000万年間に, 気候は単純に寒冷化あるいは温暖化したのではなく, 温暖気候と寒冷気候が交互に4回ずつ訪れた。汎世界的規模の絶滅を何度か経験しながらも生物の多様性は概して増大してきた。顕生代初めに超大陸ゴンドワナが分裂し, 次の超大陸パンゲアは古生代から中生代にかけて分裂し, 現在にいたっている。汎世界的な気候変動に影響を与える因子は, 地球内に原因をもつ地球内因子(アルベド, 大気・海水組成, 火山噴出, 海陸の地理的分布, 海流大循環, 海水準, 生物群集の変化)と地球の外に原因をもつ地球外因子(太陽放射熱量変動, 公転軌道, 隕石の衝突)に分類することができる。炭酸循環は, 生物圏とも, 気候とも相互関係を有してきた。炭素同位体は地球表層の炭素リザーバーの状態を知る上で重要な間接指標である。δ^<13>C値は, 生物生産, 有機炭素の埋没あるいは供給によって多いに影響される。全球的規模での黒色頁岩堆積などの大規模な炭素の沈積時にはδ^<13>C値は極大を示している場合が多く, このようなδ^<13>C値の大きな変動は生物事件と結びついている。但し, 小規模な生物事件の場合にはδ^<13>C値変動として現れない場合もある。滞留時間が長くなるにつれて, 物質循環に関係する深さが深くなる。マントル-コア境界から上昇してくるスーパープルームの活動が活発であった中期白亜紀には, 気温, 黒色頁岩や石油の形成速度, 海水準がいずれも高くなった。これらの地質学的異常は, 海洋地殻の形成速度, 炭素や栄養塩を含む火山からの供給を伴っていた。地球全体の物質循環は地球表層環境の変動にも大きな影響を与えている。
- 日本地質学会の論文
- 1998-03-27
著者
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